実は仕事柄、(くどいようですが、僕自身はそんな身分ではまったくないくせに)あくまで、おつきあい的に、日本を代表するホテルに宿泊し続けてきました。
ホテル界の御三家と呼ばれるホテル、新御三家と呼ばれるホテル、その他、外資系の有名ホテルにはすべてひととおりお世話になりました。 Oも、Nも、Wも、Fも、Pも、すべて。
そのすべてが素晴らしく、アメリカのホテルでは味わえない、最高のおもてなしを受けさせてくれました。
その上で、
帝国ホテルは、そのどれとも違うー。 他のすべても素晴らしく、実際のサービスでは帝国に負けてないほど。 むしろ、近年できた外資系の方が建物自体は新しく、近代的で、スマートさは上かもしれません。 それでも、帝国ホテルにチェックインした時に感じた、ここだけの、言葉にできない空気を感じました。 豪華すぎるけれど、威圧的ではない。 親近感はあるけれど、風格は揺らがないー。
唯一その感覚にいちばん似ている(近かった)と思ったのは、これも5年前に1泊だけしたドバイの世界で唯一の七つ星ホテル、バージュ・アル・アラブでした。
その感覚は、僕に、ホテル業界とはまったく関係のない、5年前のあるメジャーリーガーに取材した時のことを思い出させてくれました。
今から5年前─。 当時シアトルマリナーズのICHIRO選手が、ニューヨークヤンキースに電撃移籍した際のことです。 本拠地ヤンキーススタジアムでのデビュー戦後ロッカールームでの日本の記者向けによる囲み取材がありました。
数名の記者がご本人を囲む中、僕が名門ヤンキースで初プレーした感想を訪ねた時、こう話してくれました。
「ヤンキースには、ヤンキースにしかないプライドのようなものがありますね。 独特の、、、なんというか、ライオンにはない、トラのような高貴さがある」、、と。
ライオンにはない?
トラのような。 。 。 。 ?
その際はよくわからない表現でした。 ライオンだって百獣の王だし。 人によってはトラよりライオンを上に位置づけする人もいるだろうし。
ホテルの話に、いきなりメジャーリーガーのコメントを持ち込むのもヘンな話ですが。
今回、帝国ホテルに滞在して、この5年前のイチロー選手のコメントをふと思い出しました。 考えすぎかもしれないれけど、その時意味不明だった言葉の意味が少しわかった気がします。
前述の日本を代表する一流ホテルたち。 そのすべてが素晴らしく、堂々としたたたずまいは、自然界に例えるなら、まさしく、百獣の王、ライオン。
対して、帝国ホテルは、まさしく、イチローの言ったようなトラのような風格と矜持。
どっちが上ということではなく、トラはトラだけが持っている高貴さがある。 帝国ホテルは、ここにしかない高貴さがありました。 決してお高くとまっているという意味ではなく、日本を代表して、海外からのVIPたちを、日本を動かしてきた要人たちを、受け入れもてなしてきたプライドー。
あー、こーゆーことか。 5年前のヤンキース移籍時のセリフの真意が、日本のホテルにチェクインした際、やっとわかった気がします(笑)。
やはり無理してでも、一度は宿泊すべきホテルだと思いました。