都議選「大敗」が見えた民進党は、まず野田幹事長をクビにせよ

 

21世紀の社会像を描く

次期総選挙のタイミングは、一般論としては、

(1) 今年8月に例えば橋下徹とか小泉進次郎とかを登用する派手な内閣改造をブチ上げて、その勢いで秋に解散、

(2) 2018年春以降、夏前にできれば憲法改正国民投票と抱き合わせで打って、勝てば9月の自民党総裁選は無投票3選、

(3) 2018年9月に3選を果たした後、12月の衆議院議員任期満了に限りなく近い解散で、この場合も出来れば改憲投票と抱き合わせにしたいが、無理なら改憲投票は2019年7月参院選と抱き合わせ

──のいずれかで、今のところ(3) となる可能性が大きい。

(1) は、この会期末の「安倍と菅の凶暴罪」などと揶揄されている無惨な終わらせ方が、どれほどのダメージとなって8月まで残っているのかによって内閣改造の大幅・小幅の判断が変わってくるし、そのどちらであっても自民党内のザワザワした空気を一層掻き乱すことになる可能性が大きい。2018年は前半も後半も、天皇退位と改元の準備や行事が粛々と進むので、安倍首相3選=長期政権化の思惑や改憲願望などの個人都合のために政局をいじくり回していいのかという空気が強まるだろうし、改憲の発議も間に合わないのではないか。

従って(3) の公算大なのだが、その場合も、来年9月に安倍3選がすんなり罷り通るかどうかはまったく保証の限りではない。すでに賞味期限が切れかかっている安倍首相で総選挙を打つよりも、ガラッと看板を一新して臨もうということになる可能性が、私の予想では50%以上である。

そこで民進党としては、この夏から秋にかけて、じっくりと構えを立て直して、政策面で安倍政治と全面対決するための仕込みをすべきだろう。それには3次元があって、第1は、アベノミクスの徹底的な検証・批判である。2018年4月には黒田東彦=日銀総裁の任期がやってきて、ということはアベノミクス発動から丸5年というタイミングでもあって、さてそのお陰で日本経済は一体どういうことになったのかを巡って大議論を巻き起こさなければならない。恐らく安倍首相は、アベノミクスは失敗ではなかったと強弁するために嫌がる黒田総裁を再任しようとするだろうが、民進党はじめ野党は日本のエコノミストの良心を総動員して完膚なきまでにその失敗を批判して黒田総裁を追放しなければならない。

第2に、再々延期された消費税の10%への増税は、今のところ2019年10月に実施されることになっていて、その是非を判断するのは1年前の18年秋であって、上記(3) の総選挙時期と重なる。そこで民進党としてはそもそも野田政権が提起して政権を失うことになった原点とも言うべき「税と社会保障の一体的改革」に立ち戻って、誰もが安心して暮らせる日本的福祉社会のイメージと、それでいて財政再建も可能になるような国民負担設計と直接税・間接税比率の見直しとその中での消費税のあり方についてのトータル・プランを提示する必要がある。

民進党の何がまずいのかと言えば、せっかく「税と社会保障の一体的改革」という正しい問題提起をしながら、その詳細なプランを示す責任を果たさず、安倍政権に「消費増税」だけを食い逃げされることに唯々諾々としてきたことである。「税と社会保障の一体的改革」の構想で合意できない以上は消費増税に反対するということでスッキリすればいいのに、消費増税は我が党が言い出したことだから反対出来ないというような中途半端に陥るのである。

そこを深めるには、このところ前原誠司氏が傾倒している井手英策=慶応大学教授の「生活保障と税」の理論が出発点になるかもしれない。

第3に、その構想を包み込む中長期的なリベラル・サイドの成熟経済ビジョンを押し立てて、未だに「成長」と言い続けている安倍首相との違いを際立たせることが必要である。参考になるのは、水野和夫=法政大学教授の近著『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀』(集英社新書 )で、世界資本主義がフロンティアを失って、ほんのわずかな利益を求めて世界中をのたうちまわるような断末魔状態にある中で、それに我慢しきれなくてトランプやメイのように19世紀的「国民国家」に立て籠もろうとするのでなく、EUやASEAN のように世界は有限との前提のもとで定常状態の経済を目指す国々の連携を目指すことになる。東アジア共同体構想がその回答となる。

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