反改憲、反安保法制、反原発
安倍首相のそそっかしい改憲論には、ゆったり構えて対処すればいいのではないか。国民は誰も、急いで改憲しないと生きていけないとか思っていないので、野党が悠長に構える方が安倍首相の上っ滑りを際立たせる。
とにかく安倍首相は焦っていて、それは森友・加計学園疑惑で追い詰められて、何とか別の方向に捌け口を見つけようとする動機不純に根ざしている。日本会議向けのビデオ・メッセージと読売新聞とのインタビューで唐突に「9条加憲論」を打ち上げて、国会で問われると「読売新聞を読め」というような態度は常軌を逸していて、自民党内でも保岡興治、船田元、中谷元ら“憲法族”から反発があり、公明党にも戸惑いが濃厚である。
安倍側近の間では、2018年中の総選挙か2019年夏の参院選のどちらかと改憲国民投票を同日実施するという案が当たり前のように語られているけれども、これは実は2007年の国民投票法成立に至る議論の中で、全く性格の違う2つの支持獲得運動を同時に行うことは「不可能」と結論が出ていることで、それでも安倍側近がそれを言うのは、10年前の議論への無知と、もう1つは、同日で実施すれば、仮に改憲投票で負けても総選挙で負けなければ安倍首相が退陣しなくて済むという“計算”なのだそうで、余りに姑息な政局思惑である。
これに対しては、自民党の二階俊博幹事長も16日、「こういう大きな問題は、1つ1つ丁寧にやればいいと思う」と、同日論をはっきりと否定した。
民進党の枝野幸男=党憲法調査会会長は、16日の会合で、憲法第9条は専守防衛に徹すること、7条を利用した首相の衆院解散権を制約すること、国と地方のあり方を明確にすることなどを中心に、全国で支持者との対話集会を開く方針を決めたが、それでいいのではないか。
秘密保護法、安保法制、共謀罪という一連の戦時体制化方策に関しては、いずれ政権を奪回して全部をめくり返すことになるのだろうが、それは対話を通じての近隣外交とその先の北東アジア、そして東アジアを包括した「地域共同体」の形成の構想と裏腹にならなければ実現しないだろう。
反安保法制に関しては、政権を奪って集団的自衛権容認の閣議決定廃止、従ってそれを根拠にした安保法制も無効化する。反原発に関しては連合≒電力労連という呪縛と決別して、原発再稼働には一切反対、時間はかかっても順次、再生可能エネルギーへの転換を着々と進めるという方向で、その工程表を示せばいいのではないか。
連合は地方では電力や電機の力が強くて、野党共闘の妨げになっている場合が少なくないが、民進党としては無視すればいいのではないか。電力労連など、組合内で調査すれば、若い層を中心に自民党支持が大多数で一般的な世論調査結果と何ら変わりはなく、民進党が大事にしなければならない支持基盤でも何でもない。「脱原発を言うなら支持できない」とか言われても、「あ、そうですか、どうぞ」と言っていればいいのである。それで何票も減ることはない。
以上のような政策的な打ち出し方を一言でいえば「リベラルの旗」ということである。民進党がいつまでも「中道」とか「センター」とかいう足して二で割る無価値路線を掲げていると、永久に政権は獲れない。
次の衆院選は野党共闘を深化させるには、民進党のリベラル路線と共産党の左翼路線とがどこまでどういう風に折り合いを付けられるかということが主軸であるけれども、民進側に明確な路線が立っていなければそもそもその議論が成り立たない。
夏から秋にかけて、民進党がそのようなリベラル軸をスックリと立てられるかどうかが問われている。(続く)
image by: YouTube(民進党)