辻褄が合う。加計問題で「京産大」が締め出された不可解な理由

 

そのわずか5日後、12月15日の諮問会議で、広島県と今治市が国家戦略特区に指定されることがあっさり決まった。

実質的に会議を主導する有識者議員の竹中平蔵氏は喜びのこもったコメントを述べた。

今まで中国・四国に特区はなかったので今回新たに入るということは意味がある。とりわけ獣医学部を含むライフサイエンス系の問題にこの地域が取り組もうとしているところは、高く評価すべきだ。

加計孝太郎理事長と安倍総理が祝杯をあげている昭恵夫人撮影の写真はその年のクリスマスイブのものだ。

諮問会議の決定を受けて、翌2016年1月、広島県と今治市が特区に指定された。だが、まだ獣医学部の設置者が加計学園と決まったわけではない

3月になると、京都府から特区提案が出てきた。綾部市に京産大が獣医学部を新設するという計画。ライバルの出現である。

大学認可の権限は文科省にある。文科省は当然のことながら、獣医学部新設に関する石破4条件にこだわった。それは、閣議決定を重視する真っ当な姿勢だが、官邸、内閣府はそれが気に入らない。ご都合主義の内閣は、自己矛盾などおかまいなしだ。

6月に前川喜平氏が事務次官に就任した。安倍官邸にとっては思いのほか難物だった。

文科省財務課長だった小泉政権時代、「前川喜平の『奇兵隊、前へ!』」と題したブログで、三位一体改革により義務教育国庫負担金を減らそうとする官邸に反抗した異色の官僚である。

官邸、内閣府に焦りが生まれた。前川氏を説得しなければならない。特区担当の地方創生大臣も、石破茂氏ではやりにくい。

2016年8月、内閣改造で石破茂氏は地方創生大臣を外れた。すると、内閣府は今治市に指示して、平成30年4月開校をめざすスケジュール表を作成させた。

8月下旬、前川氏のもとを加計学園理事で内閣府参与の木曽功氏が訪ねてきた。「獣医学部をよろしく」という話だった。

前川氏は文芸春秋2017年7月号に掲載された手記にこう書いている。

昨年8月の内閣改造に伴って石破さんが大臣をお辞めになるまでは、この話は動いていません。振り返ってみれば内閣改造以降、物事がぐっとスピーディーに動いているのです。8月末の木曽さんの訪問、9月上旬の和泉さんの要請も軌を一にしているように見えます。

11月には加計学園が計画地でボーリング調査を実施した。すでに既定路線になっていたことは明らかだ。

今年1月4日、安倍総理と松野文科大臣の名のもとに、国家戦略特区における獣医学部の新設については、30年4月開学できる1校に限り「認可の基準第一条第四号」の規制を適用しないことが告示された。

「第一条第四号」とは、医師歯科医師獣医師船舶職員を養成する大学の新設を許可しないという決まりである。この規定の適用外とすることで、特区での獣医学部新設が特例的に認められたわけだ。

30年4月に開学できる獣医学部1校という条件は、そのつもりで準備を進めてきた加計学園のために設定したものであり、募集に応じることができたのは、加計学園1校のみだった。

さっそく加計学園は3月に設置認可を文科省に申請した。諮問を受けた大学設置・学校法人審議会は8月末までに審査し文科大臣に答申することになってい
る。

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