未来がまったく見えぬ日本を追い込む、マイナス金利という蟻地獄

 

国民が節約志向になり、いつしか一部の富裕層を除き「お金を使わないこと」が当たり前になってしまった日本。しかし、不況と言われた時代はすでに脱しており、日本経済は思っているほど悪くないということも数字で証明されています。ではなぜ未だ閉塞感が漂い続けているのでしょうか。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』の著者・嶌信彦さんは、「日銀と政府に原因がある」と指摘しています。

物価目標2%は正しいのか

アメリカ、欧州、カナダなどの中央銀行は金融緩和の見直しへ助走し始めている。これに対し日本だけはなお物価見通しの下方修正を続けている。大規模な金融緩和からの出口を見通せないのは日本だけになりつつあり、政府・日銀は物価上昇率2%の目標を達成するまで緩和を続けると頑なだ。世界的なデフレ傾向が依然続く中で、金融緩和策を続ければ、円安誘導批判や様々な副作用も出始めている。はたして2%の物価目標維持は正しい政策なのだろうか。世界経済全体の動向や今日のデフレ時代の特徴を根本的に検証し政策を見直してもよいのではないか。

パフォーマンス酷くない日本経済

日本の景気は国際的にみても決して悪い方ではない。実質成長率GDP)は、大体1~3%で、先進国の中ではEUより良く、移民で人口が増えているアメリカよりやや悪いといった傾向だ。日本の2016年度のGDPの実額(名目GDP)は約537兆円でアメリカ、中国に次ぎ世界第3位。80年代の平均4%台の成長に比べると見劣りするが、バブル崩壊、それに続く「失われた20年」、リーマンショック、3.11の東日本大震災などの大動乱を考えると、日本はよく頑張ってきたといえる。

しかも7月3日に発表された6月の日銀による全国企業短期経済観測調査(短観)によると、代表的な指標の大企業・製造業の業況判断指数は9ヵ月連続で改善している。大企業ではプラス17で2014年3月以来の高水準、大企業の非製造業はプラス23で、6ヵ月連続のプラスだった。9月の見通しも大企業の製造業・非製造業はプラス15、18と好調を持続する気配だ。

一方、中小企業の製造業はプラス7と四半期連続で改善し、07年3月以来の高水準という。また雇用水準は92年2月以来の「不足」超の水準が続き、人手不足感が一段と強まっている。さらに消費も持ち直しており国内百貨店の売上げ(大手3社)は前年同月比0.9~4.8%の伸びで高島屋の場合、免税売上げは前年比37.6%増、宝飾品は12.8%増で「個人消費は確実によくなりつつある」としている。ただ内閣府は設備投資の受注額が非製造業で低迷が続き、景気持ち直しの動きに「足踏みがみられる」とまだ悲観的だ。

しかし個別企業では好調なところが多く、ユニクロのファーストリテイリングの16年9月~17年5月の連結最終決算は前年同期比で売上高3.0%増、利益69.1%増という好調ぶりだ。また外食産業も人手不足でロボット開発や営業時間短縮などで対応しているという。

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