深刻化する就活「オワハラ」に、現役弁護士がアドバイス

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就職活動中の大学生に対して、他の会社への就職活動をやめるように迫る「オワハラ」。人気の無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』では、最近大きな問題となっている、企業のこのような行為に対して、就活生はどのように対応すればいいのかをレクチャーしています。

就職活動をめぐる法律問題

来春の大卒採用に向けた大手企業の選考活動が8月1日より解禁になりました。景気の回復などで、現在「売り手市場」で学生が優位な状況であると言われています。

学業に配慮し、経団連加盟企業は選考活動の開始日を例年よりも遅らせましたが、経団連に非加盟の外資系企業や中小企業は採用選考をすでに本格化させています。文部科学省の調査によれば、大学と短大の7割近くが、就職活動中の学生から、企業からハラスメントを受けたと相談されていたことが明らかになりました。その中でも特に、内定を出す代わりに、大手企業に応募せずに就職活動を終了するように迫られる「オワハラ」が多いとのことです。今回は、就職活動をめぐる問題について見てみたいと思います。

今各メディアで取り上げられている「オワハラ」ですが、これは、早めに内定や内々定を出した優秀な学生を囲い込むために行われます。文科省の調査によれば、内々定の段階で誓約書の提出を求められたり、8月1日の大手企業の選考活動の解禁日に内定者の合宿に参加を義務付けて、他の企業の選考に行くことができないようにしたり、面接の場で他の企業へ断りの電話をかけるように強要された、というケースもあるようです。

新卒採用活動において、1人につき約100万円の費用をかけているという企業もあり、採用活動をいかに行うかは企業の命運をかける一大事業といっても過言ではないかもしれません。企業としても、簡単に断られてしまうのではたまりません。学生に就職活動をやめてもらえないかといった交渉を持ちかけるのは、一概に悪いこととは言い切れません。

しかし、度をすぎた内容で一方的に学生に就活の終了を求める場合は、その態様によっては刑法の脅迫罪(222条1項)や強要罪(223条1項)が成立する可能性があります。「他企業から内定を受けたら裁判を起こして損害賠償をとってやる」という場合には脅迫罪、土下座のようなことをさせる場合には強要罪が成立する可能性があります。内定を断るための電話をかけさせることにも、強要罪が成立する可能性があるという話も聞きますが、さすがに強要罪の成立は難しいかもしれません。

法的には問題とまではならなくとも、このインターネットが発達した現在、企業からそのような態度を取られたということはあっという間に広がります。ブラック企業等との認定を受けてしまうという社会的な制裁を受けてしまう可能性もありますので、企業はそのような要求を学生にする危険性に十分注意する必要があるでしょう。

また、自分が学生で、そのような要求がつきつけられた場合には、「この行為はオワハラかもしれない」ということを認識し、その場で慌てて結論を出さないように気をつけましょう。オワハラにあった場合、すぐに就職支援窓口に相談するように、としている大学が多いようです。

なお、内定辞退についてですが、内定は期間の定めのない労働契約と考えられています(内定の法的性質の詳細については「内定の取り消しってどうなるの?」を御覧ください)ので、2週間前の予告期間を置けば自由になしうる、というのが原則となっています。

とはいえ、内定をくれた企業は、自分たちの一員として迎え入れたいと、その学生を高く評価してくれた企業です。自分が学生であって、第一志望の企業に内定がとれたので、それ以外の企業の内定を辞退するという場合、企業の状況にも思いを馳せて、なるべく早く連絡を入れるといった誠実な態度で臨みたいものですね。

image by:Shutterstock

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