1日で1億円売った伝説の販売士も。実演販売プロ集団の「伝える力」

 

売れない時代にモノを売る~ヒット連発の実演販売集団

いまやホームセンターからスーパーまでが頼りにする実演販売のプロ。そんな彼女が所属しているのが東京・恵比寿にあるコパ・コーポレーションだ。従業員は48人だが、そのうち33人をしめるのが実演販売士だ。

彼女の名前はエプロン太田。「覚えてもらいやすいように。料理系が得意だよというアピールもある」という理由でこう名乗る。他にもナックル井上、ワッショイ浜……ちょっとユニークな名前をつけて、企業にも消費者にも覚えてもらうのが狙いだ。

店頭のほか、展示会などのイベントやテレビ通販でもコパの実演販売員は活躍中。テレビ通販はキー局から地方局、さらにテレビ通販専門チャンネルなど全部で18番組。その存在感は、あの「ジャパネットたかた」に匹敵するともいわれるほどなのだ。

「うちは実演販売ではリーディングカンパニー」と豪語するのは代表の吉村泰輔(48歳)。吉村は実演販売員たちを束ね、創業20年で年商22億円の企業にまで成長させた

「一匹狼はいっぱいいますよ。でもうちみたいに組織だっているのは世界でも見たことない」(吉村)

そんな吉村の原点は東京・秋葉原にある。かつては吉村自身も実演販売員だった

1980年代、「実演販売の甲子園」と呼ばれていたのが、いまは無きアキハバラ・デパート前の広場。週末ともなると、いくつものワゴンが並び、一匹狼の実演販売のプロたちがしのぎをけずっていた。当時、國學院大学の学生で演劇研究会に所属していた吉村。実演販売のバイトで度胸をつけるのが、演劇サークルの伝統だった。1週間で20万円。当時の大卒初任給並みの売上げを記録した吉村は、そのまま実演販売のプロとなった。

そんなある日、いつものように実演販売をしていると、客から「宣伝屋の商品なんか信用できないな」と声がかかった。当時は調子のいいことを言って売りつける「宣伝屋」とさげすまれていたのだ。

いかがわしいものと思われるのは嫌でした。信用力が無かったので非常に悔しい思いをしていました」(吉村)

一匹狼では企業にも客にも信用してもらえない。吉村は1996年に会社を設立。実演販売の地位向上を目指した。

「これだけのアピール力、販売力があって、あとは与信力、信用力があればどこの会社にも負けないと思ったんです」(吉村)

信用力をつけるため、吉村は実演販売員を育成し組織化。他に例をみないプロ集団を作り上げていったのだ。

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1日1億8000万円を売る男~実演のレジェンドに密着

吉村の愛弟子の一人が松下周平。実演ネームはレジェンド松下。この日は包丁の試し切りをしていた。販売員はみな商品の特徴をとことんまで突き詰める

「一回、その商品を極めるっていうのは絶対重要なんです。そうしたらいつでもその商品はできるようになる」

松下の主戦場はテレビ通販。1日2億円近く売ったこともある、まさにレジェンドだ。現在、週に7本の通販番組に出演する売れっ子だ。

松下がやってきたのは24時間放送のテレビ通販専門チャンネル「ジュピターショップチャンネル」。午前8時、生放送がスタートした。売るのは群馬県のスーパーで売れまくっていた「スーパーストーンバリア包丁」だ。結局、1時間の放送でなんと3800を越える注文があり、3000万円以上を売り上げた

「ガマの油売り、バナナの叩き売り、レジェンド松下。脈々と流れているんですよ。ということは、もっとも古くてもっとも新しいのが実演販売。ネット通販だろうが、ITだろうが、なくならないんです」(吉村)

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