では、「蚊」や「虻」など、いわゆる「昆虫」に使われている「虫」はなんでしょう? こちらは,本来は「蟲」という文字が使われていました。蛆虫みたいなのがわさわさ湧いているようすを…、すみません、朝から思い浮かべてもらうのは恐縮なのですが、そのような感じです。
『易経』には「山風蠱(さんぷうこ)」という卦があります。これは物が腐敗したことを意味する卦ですが、まさに皿の上の物が腐敗して蟲が湧いている様子を「蠱」という一字で表しています。「蟲」がやがて略されて「虫」とだけ書かれるようになったので、「蛇」や「蛙」と「蚊」や「虻」が同じようなグループになってしまったのです。
魚編の漢字は良くお寿司屋さんの大きなお湯のみに書かれていることもあって、興味を持つ方も多いと思いますが、虫偏の漢字にもぜひ興味を持ってくだされば…。あまり好まれないかな…。
『易経』では、他に「水雷屯」という卦があります。これは春になって芽が出ようとしつつも、なかなか頭を出せないで苦労している、いわば「産みの苦しみ」を表しています。
春になって出ようとする…、蠢くという漢字がありますね。「うごめく」と読みますが、下に虫が二つ並んでいます。こちらは一般的に「昆虫」を表しています。春の下に「蟲」じゃないところがポイントですね。「蟲」が出てこようとするのは春じゃない。
虫がひとつかふたつかみっつか…。意味がそれぞれ違うのが面白いですね。
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