何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

2017.09.13
by 小林繭
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沖縄本島北部の総称「やんばる」。鬱蒼とした亜熱帯の森林地域が広がります。そのやんばるの最北端に位置するのが、沖縄県国頭郡国頭村。今回は、その国頭村の最北の集落「奥」のさらに外れに知る人ぞ知る人気宿「空の間indigo」を紹介します。

 

沖縄、やんばる。最北の集落で見つけた五感を感じる宿

沖縄本島の北部を総称して「やんばる」と呼びますが、それは、漢字で書くと「山原」。その文字が占示すよう、やんばるにはうっそうと亜熱帯の森が生い茂げり、鳥たちや虫たちの気配が色濃く、山の自然が続く海には豊かなサンゴが育ちます。人も車も本当に少ししかいなくて、スーパーもコンビニもなく、買い物は村で運営する共同売店が頼り。子どもたちは大きな子も小さな子もみんな一緒になって遊び、道には天然記念物である「ヤンバルクイナ」や「リュウキュウヤマガメ」の姿を普通に見ることができる、そんな場所です。

今回紹介したいのは、やんばるの最北の集落「奥」のはずれでひっそりと宿を営む「空の間indigo」のお話しです。

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

エントランスの看板

那覇からやんばるを目指すドライブで誰もが立ち寄るのが、沖縄本島最北端の「辺戸岬」。そこを過ぎさらに車を走らせると、最北の集落である奥にたどり着きます。集落といっても車ならものの10秒ほどで通りすぎてしまう小さなもので、「空の間indigo」があるのはその奥の集落の一番はじっこ

県道沿いにごくごく控えめに立てられた看板は、気をつけて見ていないと見逃してしまいそうなものですが、看板に従ってどこへ続くのかと思われる小道を抜けると、そこだけぽっかり森から浮かんだような空間「空の間indigo」が現れるのです。

出迎えてくれるのは、南国の植物が生い茂る敷地を自由に走りまわる烏骨鶏たちの姿で、彼らが走りまわる庭にはハンモックやツリーハウスをはじめギャラリーやカフェスペースが点在します。

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

庭でうろうろする烏骨鶏たち。毎朝、宿ではこの烏骨鶏の産みたて卵を使った朝ごはんがいただけます。

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

庭の中心にあるツリーハウスとハンモックのコーナー

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

ギャラリーは24時間オープン。様々な本やアート、楽器などが並びます。

庭は回遊式になっていて、さながら森の中の小宇宙といった感じでしょうか。さらに、この庭の先には海が開け、誰もいないやんばるのプライベートビーチが現れるのです。

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

エントランスからの全景

 

荒れ放題の場所をゼロから切りひらき開拓

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

コテージの宿泊棟

オーナーである柴田望さんが、ここに「空の間indigo」をオープンしたのは今から7年前のこと。福岡出身の彼女が何かに引かれるようにやんばるにやって来て、この地と出会い、約2年もの時間をかけて今のような形につくりあげたのだそう。

ログハウスとコテージだけという小さな宿ですが、なんともぬくもりにあふれる居心地のよさは少しずつ口コミで広がり、やんばるのユニークな宿として知る人ぞ知る宿になっています。

 「もともと宿をやりたいとか、カフェをやりたいとか、そういうのがあって土地を探していたわけではないんです。ただこの地に出会ったときに何かものすごく特別なものを感じ、うまく言葉では説明できないのですが、本当に引き寄せられるように来てしまったんです

最初に望さんがこの地に降り立ったとき、ここは森に閉ざされた場所だったと言います。地元の人たちには古くから特別に土地の力が強い場所として知られていましたが、自由奔放に枝を伸ばし巨大に成長した亜熱帯の植物たちと廃材やゴミに埋もれ、長い間人が寄り付けない場所になっていたのです。

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

こちらももちろん手作りのバスルーム棟

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

トイレの水洗い場には、やんばるの湧き水が流れます。

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

カフェスペースへと続く廊下。

荒れ放題になっているこの場所をなんとか風通しのよいものにしなければと、一念発起した彼女がゴミを捨て、枝や木を切り、道を作り、庭を作り、小屋を建て…。周囲の協力を仰ぎながらとはいえ、それは文字通り“開拓”と呼べる作業

「この場所を切り開いたときの話をすると、なんともうまく説明がつかないのだけど、とにかく自分ではない何かの力に動かされた感じです。普通に考えたらまさかゴミの山だらけになっている森を女ひとりで開拓しようなんて思いません。とにかく無我夢中でひたすら身体を動かし、見えない力に押されながらひとつひとつ作りあげていったら、気が付いたときにはここが出来上がっていたという感じです。それで、出来上がってからどうしようかと考えたら、宿にするのがいいんじゃないかと思って」

と「Indigo」の成り立ちについて語る望さんの話を聞いているとなんとも不思議な気分になってくるのですが、それを体験しているご本人自体も不思議だと思って話しているので、つまりはこの場所のすべてが不思議なんだということで腑に落ちます。

県道脇の海へと続く抜群のロケーションにもかかわらず、長い間荒れ放題になり放置されていたこと。これまでこの場所をなんとかしようと思い開発を進めた人は幾人もいたけれど、そのどれもが上手くいかなかったこと。見えない力に引き寄せられるようにやって来た望さんが、なぜだかわからないけどこの場所をなんとかしようと思ったこと。

初めてだらけのことにも関わらず土地の所有者からの許可もすんなり降り、森を切り開き、道を作り、気が付いたら小屋まで建ててしまったこと。

そして、現在「空の間Indigo」は望さんとその旦那さんである憲二さんのお二人で営まれているのですが、憲二さんのもともとの職業が建築家であるということも不思議です。

何もない贅沢。沖縄最北の地にひっそり存在する隠れ宿「空の間indigo」

カフェ兼食事スペースと食事の用意をするオーナー夫妻

 

お二人が出会ったのはこの場所がすっかり出来上がってからのことで、1人旅で沖縄に来ていた憲二さんが海辺に迷いこむようにやって来きたのがきっかけだったそう。

話を聞いていると、どうせなら森を切り開くときに男手があれば助かるし、建築のノウハウを持っている憲二さんの腕前を発揮する絶好の場だったように思いますが、森が切り開かれたからこそ憲二さんはこの場所に迷い込んできたわけなので、やっぱり色々と不思議なご縁がつながって今に至っているのです。

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夕食には新鮮なやんばるの野菜を中心に、望さんの出身である九州の食材などを使った料理が並びます。

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記事提供:ジモトのココロ(ジモココ)

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