【書評】精神科医も敗北?カウンセリングと占いの意外な共通点

0920_creater
 

鬱病ではないけれど、心の底から笑ったことのない精神科医。そんなメンタルヘルスの専門家が頼ったのは、占い師だった…。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介するのは、精神療法やカウンセリングと占いの意外な共通点を浮き彫りにする1冊です。

81gOdlJ7GAL

鬱屈精神科医、占いにすがる
春日武彦・著 太田出版

春日武彦『鬱屈精神科医、占いにすがる』を読んだ。「不安感と不全感と迷い」に精神を覆い尽くされた状態に陥っているという著者。生まれてこの方、ずっとそんな調子で、心の底から笑ったことが一度もなく、ここ5年くらいがことさら不調であるが、鬱病というわけではない。診断的にはパーソナリティの問題であろうという。だいじょうぶか、この精神科医。

カウンセラーに相談という手もあるが、いわば手の内を知っている同業者に悩みを打ち明けるのは双方が気まずい。文学で安らぎを得られることもあったが、救いは訪れない。お手軽さも極まるが、次は占い師にすがって、救われたいと考える。本気なのか、現役の精神科医、いくら寄る辺なくても占い師とは……。

著者は60歳前後の数年で計5回、5人の占い師を訪ねている。ネットで調べて評判のよかった池袋の女性占い師。60歳近くのごく普通のオバサンだった。精神科医というと大概の占い師は警戒モードに入るものだが、オーラが見えるという霊感カウンセリングのこの人は平然としていて、なかなか話させ上手である。

著者は思いの丈を、ややまとまりを欠きながらも延々と語る。自分でも話の焦点が合っていないことを実感している。占い師は問う。「もしあなたの患者さんが今おっしゃったようなことを語ったとしたら、あなたは担当医としてどんなふうに答えますか」。そこで精神科医らしい対処法を語る。すると占い師は「まさにそれがわたしの言いたいことです。お分かりになっているじゃありませんか」

print
いま読まれてます

  • 【書評】精神科医も敗北?カウンセリングと占いの意外な共通点
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け