トランプ大統領、米国で人気の高いNFLを敵に回して崖っぷちか

20170926_trump
 

アメリカの4大スポーツのひとつである、アメリカンフットボール。毎年初秋に開幕するNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)は、米国の国民的行事とも言われるほどの人気を博していることはご存知の通りです。そんなNFLに対するトランプ大統領の「暴言」が全米で今大きな話題となっていますが、私たち日本人からすると今ひとつピンと来ないのが本音ではないでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で在米作家の冷泉彰彦さんが、米国にとって政局に影響しかねないこの大問題について、わかりやすく解説しています。

NFLファミリーを敵に回したトランプ

NFLナショナル・フットボール・リーグ)は、毎年初秋に開幕し2月のスーパーボウルを目指す国民的行事と言っていいでしょう。激しいスポーツであるために、野球とは違って試合数は少なく、各チームは公式戦を16試合戦った結果でプレーオフ進出が決まります。また全国のチーム数は32であり、大ざっぱに言えば1チームに関しては1週間に1試合という日程です。

プレーオフ戦は全部で11試合あり、シードによって2試合から3試合を連勝しないとスーパーボウルにはたどり着けない仕組みです。ですから、非常に簡単に言えば1試合1試合が大変な重みを持つわけで、試合数の少ない分だけ、ファンの各試合にかける関心は高いわけです。

例外はありますが、各球団は豪華な巨大スタジアムを擁しており収容人員は5万とか8万人、中には10万と言うものもあります。それでも、需要と供給の関係で入場券は非常に高騰しており、最低でも100ドル、ちょっといい席になると1000ドルを超えるということになります。

そうなると、フットボールというのは富裕層だけのものになるのかというと、そうではなく、色々な工夫がされています。例えば、入場券が買えない人が、スタジアムのパーキングで、ラジオで試合の様子を聞きながらバーベキューをするという文化がありますし、何と言っても試合のTV中継は高視聴率を稼ぐわけです。

また、経営も非常に近代的で、ドラフト制度は前年の成績の下位から順に指名する厳格なものですし、年俸総額の格差を是正するサラリー・キャップ制度との相乗効果で、「戦力の均衡」が追求されています。現時点では、スーパーボウルについて「連覇はあっても3連覇はない」ということを、コミッショナー以下の連盟が「誇りにしている」というのがNFLカルチャーと言えます。

今でも9連覇が伝説になっている某国の某球技などとは全く違う哲学で運営されているわけですが、その経営の近代性の究極は「レベニュー・シェアリング」でしょう。チケット収入、TV放映権料、グッズ販売、スポンサーからの収入のほとんどを連盟がプールして各チームに均等配分をするシステムであり、これによってマーケットの小さい球団も経営を安定させることができるわけです。

そうしたシステムによって、NFLというのは、異なった球団が闘う場であると同時に、リーグ全体が一つのファミリーとしての結束力を持っているわけです。

そのNFLの歴史は意外と新しく、第1回のスーパーボウルは1967年で、今年のペイトリオッツが勝ったヒューストンでの試合はまだ「第51回」です。ですから、このNFLが発展したのは、70年代から90年代にかけてであり、時代を受ける格好で、政治的にも多様性の尊重などを盛り込みながら、「精密に中道ポジション」つまり、リーグとしては無色透明を目指して来ています。そうした中で、人種間の融和と団結というのもNFLファミリーの結束力の一つの側面でもあります。

print
いま読まれてます

  • トランプ大統領、米国で人気の高いNFLを敵に回して崖っぷちか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け