尊敬語と謙譲語の混同
敬語の間違いで多くみられるのが敬語の混同です。
1)お客様は昨日、参られました。
2)お見舞いには午後から伺われた方がいいです。
よくあるのが上記のように尊敬語のつもりで謙譲語を使っているケース。上の文例はそれぞれ
1)の「参る」は「来る」の謙譲語。
2)の「伺う」は「行く」の謙譲語です。
今一度、尊敬語と謙譲語の違いをおさらいしてみましょう。
尊敬語:相手や相手の行動、状況への敬意を表す言葉
相手の位置を自分より高めた言い回し
主語は相手
謙譲語:自分がへりくだることで、相手への敬意を示す日本語独特の表現
自分を低めることで、相手を高める(=敬う)言い回し
主語は自分
冒頭に挙げた2つの文とも主語は自分以外の人なので、その人に敬意を示すには謙譲語ではなく、尊敬語を使う必要があります。
1)お客様は昨日、いらっしゃいました。
「いらっしゃいました」に代わり「おいでになりました」「お見えになりました」でもよい。
2)お見舞いには午後からいらっしゃる方がいいです。
ちなみに謙譲語を使うのなら、自分を主語にして、次のような文になります。
1)(私は)お客様のところへ昨日、参りました。
2)(私は)午後からお見舞いに伺います。
敬語を使うときは、その行為・動作の「主語は誰か」を確認してから、尊敬語か、謙譲語かを使い分けるようにしましょう。
二重敬語に注意
敬語を重ねて使う誤りを「二重敬語」といいます。例えば
「会議で部長がおっしゃられた件ですが」
の「おっしゃられた」。 「言う」の尊敬語は2通りあり、
1)「言う」+尊敬語「れる」 → 言われる
2)別の敬語に言い換え → おっしゃる
このどちらかを使えばよいのですが、すでに「言う」の尊敬語である「おっしゃる」に、さらに尊敬語の「れる」を付けて「おっしゃられる」とすれば二重敬語です。
「見る」の尊敬語
〇 ご覧になる
× ご覧になられる → 尊敬語「れる」が不要
「来る」の尊敬語
〇 「お越しになる」
× 「お越しになられる」 → 尊敬語「れる」が不要
「行く」の謙譲語
〇 「うかがう」
× 「おうかがいいたします」 → 謙譲語「お~いたします」が不要
一方で
「お見えになる」(「来る」の尊敬語)
「お召し上がりになる」(「食べる」の尊敬語)
のように、日常的に使われることが増えて定着した二重敬語もあります。
今は、二重敬語として指摘されている言葉遣いも次第に定着していくものもあるかもしれません。しかし、すでに敬語化している言葉にさらに敬語を付け加えても相手への敬意が高まるわけではないので、敬語を過剰に使っていないか日頃から注意したいですね。
内と外の使い分け
社内では、上司や先輩に対して敬語を使いますが社外の相手に、自社の上司のことを伝えるときには敬語の使い方も変える必要があります。社外の人とのやり取りで上司のこと(行動や対応)を伝えるときには
●役職名を省く
●相手に対して謙譲語を使って伝える
という2つのポイントを押さえておきましょう。
× 高橋理事長は明日、御社にうかがうとおっしゃっています。
〇 高橋は明日、御社にうかがうと申しております。
× 佐藤課長は打ち合わせからまだ戻っていらっしゃいません。
〇 佐藤は打ち合わせからまだ戻っておりません。
× 山田部長が出張からお戻りになられたら、ご連絡いただくよう申します。
〇 部長の山田が出張から戻りましたら、ご連絡するように申し伝えます。
上記の文例のように社内では、目上の相手には尊敬語を使いますが、社外の相手とのやりとりでは敬語が向かう対象は(社外の)相手ですから自社の社員は上司といえども謙譲語を使い、へりくだった表現にします。
この「内と外」の使い分けを取りちがえないように気を付けましょう。
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『仕事美人のメール作法』より一部抜粋
著者/神垣あゆみ
広島を拠点に活動するフリーランスのライター。若手ビジネスマン向けにメールマナーの基本を解説した『メールは1分で返しなさい!』(フォレスト出版)など著作多数。まぐまぐから無料メルマガ『仕事美人のメール作法』を配信中。
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