「独裁政治の始まり」とも。安保国会最終盤を新聞各紙はどう伝えたか

 

そもそも集団的自衛権の出発点は?

【朝日】は1面で国会内情勢について、与党が17日参院本会議での採決を目指していること。野党は内閣不信任決議案や問責決議案などを提出して抵抗する考えであること。与党は遅くとも週内には採決できると踏んでいることなどを記す。左肩には昨夜国会前に集まった抗議の声を上げる人々の写真。さらに、中央公聴会の概略についての記事。関連は、2面の「時時刻刻」、4面に中央公聴会の発言一覧、16面社説「国会は国民の声を聴け」、39面社会面に「憲法の危機」と題する記事。

「時時刻刻」の見出しは、「最終盤『違憲』次々」。中央公聴会の模様を伝えるが、「国会の最終盤に来て、なお、法案の合憲性や必要性など根幹部分に疑問が突きつけられているが、自公は採決に突き進もうとしている」とする。

uttiiの眼

今回の中央公聴会は、法案に反対する側が特別に華やかだった。お馴染みの憲法学者、小林節氏に加え、SEALDsの奥田愛基氏、もと最高裁判事の浜田邦夫氏、さらに国際法学者の松井芳郎氏がいたからだ。浜田氏は「砂川判決」を集団的自衛権の根拠にしようとすることに対して、「法律専門家の検証に耐えられない。裁判所では通らない」と指摘。これは、法案が仮に成立した後の違憲訴訟で大きな意味を持ってくる発言。

松井氏の議論で《朝日》が紹介しているのは、武力紛争時に攻撃目標となる軍艦を使って民間人を退避させるなどということは考えられないと、政府の想定を批判した部分。これも重要だが、松井氏はもっと凄いことも言っていて、そこは4面の発言一覧で紹介されている。松井氏は「そもそも集団的自衛権は、先進国が海外の帝国主義的な権益を守るために考え出した概念であるという出発点をおさえておく必要がある」と発言した。憲法上認められるか否かという話の前に、そもそもそんな権利を国家が当たり前に持っているとすること自体に深刻な疑問が呈されていることになる。その他、小林氏は「政治家が憲法を無視することは独裁政治の始まりだ」と批判、奥田氏は「国会を異例の9月末まで延ばした結果、国民の理解を得られなかったのだから、廃案しかない」とした。

最後に、この中央公聴会では国会への「警告」も発せられたと《朝日》は記している。小林節氏が「まずは次の参院選、最終的には衆院選国民が賢い判断をすると思っている」と言ったこと。また浜田氏も法案の是非は国政選で決着をつけるべきだとして「一番早いのは選挙だ。主権者たる国民が審判を下すと、一人ひとり肝に銘じて審議してもらいたい」としたことを指している。

「採決の前提」となる儀式とみなされ、まともに報じられることがなかった中央公聴会が、これほど大きく報じられたのは初めてのことではないだろうか。いかに異常な事態が進行しているか、そのことの1つの証左なのだと思う。

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