かつて、派閥抗争に明け暮れた自民党には、カネが乱舞する悪がはびこった半面、闊達な議論のぶつかり合いによる政治的緊張があった。その分、一定方向に行き過ぎた権力を修正する能力も高かったといえる。
筆者が総括するとすれば、今回の総選挙で真に勝ったといえるのは、立憲民主党だけである。国民が制定する憲法は、政権が好き勝手できないように定めた最高のルールである。
これを本位として、市民目線で歩もうとする姿勢はしごく真っ当だ。じっくり国民がこの政党を育てていくべきだろう。
希望の党は小池氏の勢いにあやかる集団だが、小池氏の求心力が失せた今、党の存立自体が危うい。小池氏の都政運営さえも厳しくなった。
だが小池氏の理念にぴったり合う保守系議員は同党で初志を貫徹すればいいのではないか。いずれは小池氏も自民党への出戻りを画策するかもしれない。勝負に敗れ気弱になると「寄らば大樹」ということになる。その点では、小池人気を頼ってきた人たちと気が合うだろう。
話を戻すと、今回の選挙戦で希望の党の惨敗、自民党の圧勝を決定づけたのはメディア対応の差であった。
小池氏は民進党合流にからむ記者の質問に「排除します」と答えて、その場面がテレビで繰り返され、ネガティブな色がつけられた。自民党は、安倍首相の露出を最小限に抑え、詐術的な言葉づかいのできる小泉進次郎氏を自由に立ち回らせて、小池批判をテレビ電波に乗せることに成功した。
日々そうした映像を見る国民はしだいに「善の小泉」、「悪の小池」という絵柄を頭に刷り込まれる。
メディア利用の魔術師かと思われた小池氏が、自らメディアの罠にかかってしまうとは、誰も想像できなかっただろう。
それにしても、メディアは自民党の作戦に悪乗りし過ぎである。
image by: 小泉進次郎 - Home | Facebook