第三者委員会の設置に関しては何かと問題が多く、私たちにも相談が多数寄せられています。館山市の事件でも、当初、教育委員会は、「これはいじめではない」、「だからいじめはなかった」として、「死に直接結びつく要因は分からなかった」と結論づけています。つまり、「これ以上は調査しない」、「第三者委員会は設置しない」という結論が先にあったとしか、言いようがありません。
館山市で第三者委員会を立ち上げることができた理由は、ご遺族の強い希望に心動かされて、市教委の調査を求めて市民団体が要望書を提出したり、市議会議員が市議会で取り上げたり、被害者側の要望や動きを、協力的な新聞社がずっと報道し続けていたからに他なりません。
ただ、議員やマスコミを総動員しないと第三者委員会が設置されない、などというのは間違っています。いじめ被害者の気持ちを考えたら、「いじめはなかった」と決めつけることが、どんなに子供の心を傷付けることか、分からないはずはありません。
第三者委員会の調査というからには、被害状況等に関して、予断や思い込みなどを排して向き合うことが求められます。委員に「利害関係のない」人物を選ばなければなりません。しかし、多くの地方公共団体では、お手盛りの委員が選任されて問題になっています。
また、第三者委員会が設置された後にも、数多くの問題があります。
- 被害者側の話を聴いてくれない、
- 調査結果がまとまるまで時間がかかる、
- ごくわずかな関係者からしか話を聴かない、
- 学校側の意見のみで調査結果をまとめる、
など、改善すべき点が多々あります。
先生方や教育委員会が、真摯にいじめ対策に取り組めば、第三者委員会を設置するまでもなく、いじめは解決します。この日本では、2013年、「いじめ防止対策推進法」が制定されました。同法には、「重大事態」の場合には組織を設けて調査する、教師のいじめ通報義務、学校でのいじめ防止対策組織の設置、加害児童生徒の別室学習や出席停止が明確にうたわれています。しかし、「いじめ防止法」にはペナルティがないから守らなくても構わないかのような運用が、教育界ではまかり通っています。先生方は公務員ですから、法令遵守義務(地方公務員法32条)違反といえますが、法律などなくても、教育者として、子供たちをいじめのない環境で学ばせるのは、自分の責務なのだという自覚をもって、いじめに向き合っていただきたいと思います。
いじめかなと思ったら、ご遠慮なくご相談ください。少しでもお役にたてれば幸いです。
いじめから子供を守ろう ネットワーク
松井 妙子
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