習近平の掲げる中国「新社会主義」が日本の経済と外交を脅かす日

 

中国の新社会主義とは

Wikipediaによると、社会主義とは、個人主義的な自由主義経済や資本主義の弊害に反対し、より平等で公正な社会を目指す思想である。

そして、習近平は、新たな常務委員全メンバーを引き連れ、1921年に中国共産党第1回党大会が開かれた上海の記念館と、同会が官憲に察知され、場所を変えて続行された浙江省嘉興の記念船「南湖紅船」を訪れ、習近平を先頭に7人がそろって拳をあげ、入党の誓いをしたという。公平な社会を目指す習近平の新社会主義に掛ける意気込みを感じるし、中国共産党による一党支配体制を堅持することを誓わせたようである。

習近平は総書記就任直後、党中央委員を集めた会議で、「(改革開放の前後)二つの歴史時期において、社会主義建設の思想指導や方針、対策、実際の施策に大きな違いがあるのは確かだが、両者は分断されたものではなく、まして根本的に対立しているわけではない。改革開放後の歴史時期によってその前の歴史時期を否定し、また、改革開放前の歴史時期によってその後の歴史時期を否定することはできない」(2013年1月5日新華社通信)と語っている。この意味は「立ち上がり(毛沢東)、豊かになる(トウ小平)段階から強くなる(習近平)段階を迎えた」との時代認識を示したのであろう。習近平思想中国が強くなる時代の思想ということである。

今の中国は、国家政策である一帯一路の成功で経済は拡大しているが、しかし、資金のバラマキによるミンスキー・モーメントなど金融崩壊などの可能性がある国内事情を承知している習近平と共産党指導部は、国内に向って規制や統制を強化せざるを得ない。ジャーナリズムの制限や言論統制を強めている。

一党支配を崩す民主化も進めないが、このため、国民の期待を維持することが重要な課題になる。この方法として、当面は、貧富の差を縮小して国民の多くが豊かになるという期待を持たせることで一党支配の維持を図るようだ。

逆に、習近平は、「我が国の経済は急成長の段階から、高品質なものを生み出す段階に移行し、今まさに転換期にいる。途切れさせることなく、我が国の革新力と競争力を高めなければならない」と言い、“創新経済”とも命名し、自由な発想を奨励もしている。

この結果、経済政策を2つの柱で進めるようである。国家が進める計画経済と民間企業中心のイノベーションを進める市場経済の混合経済のようである。民間企業の資本自由化を進めて、自由な発想ができる方向にも動いている。

しかし、民間企業も過剰な介入はしないが、統制できるように国家総動員法を整備して、危機時にはいつでも介入できるようにしたし、企業内に共産党委員会を作り、平時でも企業に介入できる仕組みを整えた。

今までの経済成長は、国家政策と自由経済の両方でうまくいったが今後もこれを推し進めて、うまくいくのかどうかはよくわからない。

しかし、中国衰退の評論とは違い、世界的な経済圏を構築することは確実である。ある程度の経済原則が中国流になることも避けられないし、華夷思想で日本を経済的に属国化しようとしてくることも確実である。中国では自由な発想ができないので、中国人技術者が育たずに、日本人技術者を引き抜き新技術製品を作る可能性も高い

それに対応する日本の経済政策、外交政策をどうするのか、非常に難しいことになってきたことは確実である。

参考資料

Why China’s Capital-Account Liberalization Has Stalled

Oct 31, 2017 YU YONGDING

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