7月からは新たなCMを放映し、話題を集めました。女優の吹石一恵さんが扮する女漁師が、かっぱ寿司社員(岡山天音さん)と共に成長していく姿を描いたシリーズもののCMです。視聴者に「変わったかっぱ寿司」を感じてもらいたいといいます。
このCMシリーズはストーリー仕立てとなっていて、商品の訴求に終始するCMとは大きく趣が異なるものとなっています。漁師も認める「品質」の商品を提供していくことを、「やる、しかない」というメッセージとともに伝えるというものです。メッセージ性が強いCMとなっています。
第1話では商品の紹介は一切ありません。吹石さんが演じる人物があてもなく会社を辞め、父親の勧めで漁師になるところで終わる話でCMは構成されています。第2話と第3話では最後に少しだけ商品の紹介をしていますが、それ以外は第1話と同様にストーリー仕立てで構成されています。どれも、かっぱ寿司が変わっていくことを訴求することに重点を置いたものとなっています。このCMも集客に貢献したと考えられます。
かっぱ寿司はこういった従来にない打ち出しや訴求をしなければならないほど窮地に追い込まれていました。業績悪化の主因である「安かろう悪かろう」というイメージの払拭が最重要課題だったのです。かっぱ寿司はそのことをよく認識しているようで、かつて「他社と比較すると商品品質レベルにおいて劣っている」と自ら述べていたほどです。
そういったイメージの払拭ができず、客離れが止まらない状況が続いていました。14年4月から17年3月までの36カ月間では、既存店客数で前年同月を上回った月はわずか2月だけで、34月で前年割れを起こしました。前年同月比で10%以上客数が減った月が同期間で9月もあったのです。
客離れが業績悪化につながりました。14年2月期の最終損益は71億円の赤字(前年同期は22億円の赤字)となり、15年3月期(13カ月間の変則決算)は134億円もの最終赤字を計上しています。16年3月期は赤字を回避したものの、17年3月期は一転して58億円の最終赤字に転落しました。
こうした経緯もあり、かっぱ寿司は「安かろう悪かろう」というイメージの払拭に努めてきた経緯があります。しかし、打ち出した施策はどれも有効打になることはありませんでした。