ただ「バスケをする」だけの授業。
ただ「バスケをする」だけで、「バスケで勝つ力」が身につく。
それが間違っているのと、同じことである。
バスケで勝つためには、パス・ドリブル・シュートといった基礎技術を、段階的・系統的な手法によってトレーニングし、身につけることが不可欠だ。
それがあって初めて、バスケの試合で勝つことができる。
ところが、「バスケの試合で勝つためには、とにかくバスケの試合をすればよい」といった暴論が暴論と思われないどころか正論と思われ始めているのが、昨今の教育界の姿なのである。
考える力を測るテストが出る。
だから、考える力をつけさせる必要がある。
だから、考える授業をしよう。
──これは、間違っている。
考える力を測るテストが出る。
だから、考える力をつけさせる必要がある。
だから、考える力とは何かを今一度認識し直し、段階的・系統的にそれを身につけさせる授業をしよう。
──こうでなければならない。
では、考える力とは何なのか?
その答えは、私がこれまで21冊の著書の中で繰り返し述べてきたことだ。
骨組みだけ、ここに紹介しておこう。
それは、次の「3つの力」に集約される。
言いかえる力……抽象・具体の関係(同等関係)を整理する技能
くらべる力………対比関係を整理する技能
たどる力…………因果関係を整理する技能
分かりやすく言えば、こういうことだ。
言いかえる力……「どういうことですか?」という問いに答える力
くらべる力………「どう違うのですか?」という問いに答える力
たどる力…………「なぜですか?」という問いに答える力
言いかえる力・くらべる力・たどる力。
これが、思考力における「パス・ドリブル・シュート」である。
詳しくは、私の著書をお読みいただきたい。
とだけ書くのは不親切かもしれないので、1冊だけタイトルを紹介しておこう。
「記述」という意味では、『” ふくしま式200字メソッド”で「書く力」は驚くほど伸びる! 』(福嶋隆史著・大和出版)が適しているだろう。
とにかく、「3つの力」のそれぞれを、細分化されたステップの中で身につける授業なしに、2020年の入試改革を乗り越えることは不可能だ。
「考える授業」をどんなにやっていても、これらの技能を意識させない限り、それは「ただ試合をさせているだけの授業」に終始する。
「考える授業」と、「考える技能を身につけさせる授業」とは、大きく異なるのである。
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