そこで大陸間弾道ミサイル「火星15」ですが、致命的な脆弱性(弱点)を持っていることを申し上げておきます。本メルマガの西恭之氏のコーナー「テクノ・アイ」と合わせてお読みいただきたいと思います。
9軸のTELは全長が25メートル近い巨大な車両です。移動できるルートも限られています。液体燃料を使っていることもあり、1両のTEL当たり30両ほどの支援車両を必要とします。密かに米国などを狙おうにも、部隊の規模が大きすぎて隠密行動しにくいのです。当然、「大名行列」のようなTEL部隊の「巡回区域」は米国と韓国に把握されていると考えるべきでしょう。
しかも、北朝鮮は「火星14」「火星15」のような長距離ミサイルについては、いまだに移動式発射装置の上に直立させた状態で、発射筒から高圧ガスで撃ちだし、射出したあとにロケットに点火するコールドローンチ方式を実現していません。
そのまま発射すれば「虎の子」のTELを壊す恐れがあることから、要所要所に設置したコンクリートを土台とする発射台の上に直立させて発射する方式をとっています。
この発射台は、いかに数多く設置し、巧妙に隠そうとも、発見されて破壊されてしまえば、ミサイルを発射できなくなるのです。破壊がトマホークのような精密誘導兵器を使って行われるのか、それとも特殊部隊が行うのかはケースバイケースだと思いますが、北朝鮮の長距離ミサイルが深刻な弱点を抱えていることがおわかりになると思います。(小川和久)
今回のまとめ
- 沈黙を破って北が発射したミサイル「火星15」は米国東海岸も射程圏内に
- 米がテロ支援国家に指定、追い詰められた北が対抗措置としてリスクの少ない日本海へ発射
- 発射した「火星15」には、隠密行動しにくいという致命的な脆弱性がある
image by: WikimediaCommons(Robert2004)
※本記事は有料メルマガ『NEWSを疑え!』2017年12月4日特別号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『NEWSを疑え!』(2017年12月4日特別号)より一部抜粋