【沖縄基地問題】在日米軍基地の7割が沖縄に集中している、はマスコミが利用する誤表現

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『NEWSを疑え!』第355号(2014年12月22日号)

12月11日号「在日米軍基地の7割超が沖縄に集中している」とするジョセフ・ナイ氏(元米国防次官補)の認識は、日本のマスコミの表現に乗ったものだと書きました。

このときは、その理由を「『在日米軍基地の面積の7割が』というのが正確な表現で、それはハンセン、シュワブなどの広大な海兵隊基地と演習場が置かれている結果なのです。いかにも主要な米軍基地の機能の7割もが沖縄に集中しているような言い方は、日本のマスコミが好んで使ってきた誤った表現」と説明しただけでした。

そこで今回は、もう少しはっきりとご説明しておきたいと思います。

まず、ひとくちに米軍基地と言っても、次の3種類があることを知っておく必要があります。

1)米軍専有施設(米軍だけが使っているもの)横田飛行場、相模総合補給厰など

2)日米共同使用施設(a)(日米地位協定2-4-(a)に基づいて日米で共同使用している施設)三沢飛行場、岩国飛行場など

3)日米共同使用施設(b)(日米地位協定2-4-(b)に基づいて米軍が一時的に利用可能な自衛隊施設)東千歳駐屯地、小松飛行場など49施設

防衛省の準機関紙的な位置づけにある新聞『朝雲』を発行する朝雲新聞社の『防衛ハンドブック2014年版』は、1)と2)をあわせて「米軍基地」として扱い、3)とは区別した表を掲載しています。むろん、これは防衛省の公式文書をもとにした扱いです。

以下、『防衛ハンドブック2014年版』の表をもとにご説明します。

1)、2)、3)をあわせた「米軍基地」は全国で132カ所(面積1027.155平方キロ)となります。米軍にとっては、すべてが自分たちの活動を支える「基地」として存在するわけですから、この132カ所を「米軍基地」として表現するのは妥当だと思います。

そのうち、沖縄の「米軍基地」は33カ所(面積231.763平方キロ)と、全米軍基地の施設数で25%、面積の22.5%です

計算方法を変えて、1)と2)を「米軍基地」とすると、全国で84カ所(面積313.987平方キロ)となります。

沖縄の米軍基地33カ所は、このうちの施設数で39.28%、面積で73.8%を占めています。

これが「全国の米軍基地の74%が沖縄に集中している」という表現の根拠となってきたのです。

12月11日号の編集後記で私が言いたかったのは、米軍基地全体における沖縄米軍基地の割合を施設数や機能で評価しなければ、正確な表現ではないということでした。

むろん、沖縄米軍基地が全米軍基地の施設数で25%、面積で22.5%を占める現状は、沖縄県民にとって大きな負担であることは間違いありません。

その負担割合を整理・統合・縮小によって圧縮していくことは、日本政府に普通の外交力があれば実現可能だと思います。

例えば、第3海兵遠征軍司令官が務める沖縄米軍のトップ「四軍調整官」のオフィスがあるキャンプ・フォスターに、同じ司令官が勤務する第3海兵遠征軍司令部(キャンプ・コートニー)を統合することは、できない話ではありません。

広大な演習場を持つキャンプ・ハンセンとキャンプ・シュワブについても、シュワブをハンセンに吸収すること、あるいはハンセンかシュワブの半分を返還することは不可能ではないと思います。

ほかにも、整理・統合・縮小が可能な施設はあるでしょう。

そのためにも、イデオロギーに染まった「74%」という数字ではなく、実態を踏まえた数字をもとに議論する必要があります

日本の世論がリアリズムをもとに議論できるようになったとき、沖縄米軍基地の比率は施設数、面積ともに20%以下になることは間違いないでしょう。

それを実現できるかどうかが、沖縄の負担を軽減する重要かつ不可欠な第一歩だと思います。

 

『NEWSを疑え!』第355号(2014年12月22日号)

著者/小川和久(軍事アナリスト)

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。
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