中国が5年で「EV先進国」に。中島聡が予測する自動車業界の未来

 

EVシフトの一番の課題は、リチウムイオン電池に必要なリチウムやコバルトなどのレアメタルで、これが価格低下の足を引っ張る可能性は大きいと思います。その意味で、リチウムイオン電池に変わる蓄電池の開発が急務ですが、3~5年以内に商用レベルで実用化というのは難しいと思います。レアメタルの争奪戦が国同士の戦争にまで発展しないことを願います

自動運転に関しては、3~5年以内に多くの自動車メーカーが自称レベル4(完全自動運転)の自動車をリリースすると思いますが、実際は、ほとんどが今のテスラと同じレベル3(運転手の総合的アシスタント)を少し改良したレベルにとどまると思います。業界でもっとも進んでいると言われるテスラの自動運転を毎日のように試していますが、「安心して運転を任せられるレベルに到達するのはかなり先だと感じています(ソフトウェア・エンジニアとしての直感です)。

法整備の方は、徐々に整い、一部の都市で限定した場所での完全自動運転車の運行が合法化されると思います。その時に、いきなりUberのようなグローバル企業がそこでロボットタクシービジネスを運営させてもらえるのか、それとも、まずは地元の事業者が地方自治体と組んでビジネスを立ち上げ、そういった企業が後にUberなどに買収される形で統合されるのかは場所によって様々だと思います。

自動運転による長距離トラックの無人化は、技術的には十分に可能なレベルにはなっているとは思いますが、3~5年以内にそれが法的・社会的に認められるとは思いません。私は、第二東名が出来た時から、政府が「第二東名は2020年からは自動運転車しか走れないようにする」と宣言するだけで十分な新加圧が自動車業界にかかると主張してきましたが、今からでも間に合うと思います。

いずれにせよ、自動運転によりタクシーバストラックの運転手の職が奪われるということは確実で、単に時間の問題だと思います。さすがに3~5年という時間軸では大した変化は起こらないと思いますが、10年~20年という時間軸では、失業率などに大きな影響を与えると思います(米国では、労働者の15~17%が「自動車の運転」を主たる業務としているそうです)。

それよりも、自動運転の時代になると、都市のインフラが大きく変わらなければならないので、その歪みがここから3~5年以内に明らかになり、先進的な地方自治体は、そんな時代に備えた法律を作り始めるだろうと思います。米国の多くの都市では、オフィスビルを建てる際には駐車場を設置することが義務付けられていますが、その法律が時代遅れになろうとしているのです。

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