習近平が描く「チャイナドリーム」については、その脱権闘争の過程を見ると、文革時代にかなり似ています。この脱権闘争は、人民公社の一農民から、中南海の党高級幹部や国家指導者に至るまで、避けて通ることはできません。見えない敵を先に叩き潰さなければ、自分がやられる。それが中国社会であり、中国人としての運命なのです。
習近平については、よく「毛沢東主義の復活」や「スターリン主義」などと分析されています。しかし私は、漢王朝から禅譲を受け儒教の千年王国を目指して「新」王朝の皇帝となったことで知られている王莽、そして、二十世紀の民国初頭の袁世凱の「帝政」運動にも似ていると思っています。
皇帝がいなければ中国は天下大乱になる。それが中国の「伝統的文化風土」であり、習近平は「伝統への回帰」を目指しているのではないかと思われます。
中国には、古来「報喜不報憂」(いいニュースは報道しても悪いニュースは報道しない)というメディアの原則があります。また、「家醜不可外揚」(家の中のゴタゴタは他人には言わない)というのもあります。
この二つが家族、宗族主義の根幹であり、マックス・ウエーバーが言う「家産性国家」、中国でいう「家天下」の大原則です。つまり、いいことしか口にせず悪いことはタブー、または、恥ずかしい内部事情は門外不出というわけです。
今回取り上げた映画監督の王兵と習近平は、いずれも陝西省の生まれです。出身や背景など、あらゆる面で「両極端」な二人です。彼らが中国の二つの顔を代表していると言えるでしょう。日本でよく言う、光と影です。
現在、中国の統計では農民は総人口の半数を割っているとされていますが、実際は9億人以上いるとも言われています。このようにモザイクの国である中国には様々な顔があることは確かです。
しかし習近平は、自らを神格化することにより、このような社会の「不都合な真実」を覆い隠そうとしています。不安と不満だらけの社会で、民衆が指導者を讃えることなどありえないからです。
経済成長が停滞し、社会保障費も厳しくなっていく中で、習近平の絶対権力化、神格化を進めるには、貧困層の民衆の不満の声を排除、弾圧するしかありません。しかし、そこには習近平が謳う「中華民族の偉大なる復興」などないのです。
image by: 苦い銭 - Home | Facebook
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『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実』(2018年1月31日号)より一部抜粋