では、このまま楽観していていいのかというと、実は100%楽観というわけにも行きません。こうした下げが更に続いて行って、ある水準を超えて行くようですと、「株安から景気低迷」そして「景気低迷から消費低迷」という負のスパイラルが動き出して、最後には「雇用の悪化」ということになります。
実は、アメリカの場合は一旦この「マイナスの方向のスイッチ」が入ってしまうと、なかなかそこから脱出するのは難しいのです。ですから、歴代の政権は景気対策に悪戦苦闘してきたのでした。
問題は、そうなった場合にトランプ政権が迅速に、そして的確に動くことができるのかということです。今回、1月30日(火)トランプ大統領は一般教書演説を行いましたが、考えてみれば、その内容の中には「これまでの景気拡大や株高を自慢する」という要素はふんだんに入っていたのですが、「ここから先の経済を更に力強くする」という要素は少なかったように思います。
一つ大きな実績ということでは、昨年末に大規模な税制改正を成立させて「法人税の大幅減税」も「富裕層を中心とした個人所得税の減税」も実現しています。ですが、この減税については、そのプラス効果はすでに市場が織り込んでしまっているわけです。
そこで、年明けの現時点では、トランプ経済政策の第二弾として「全国のインフラ整備」ということが発表されるはずでした。30日の演説で大統領は、このことにも触れたのですが、内容は全く具体的ではありませんでした。特に、具体的に何をするかということでは全くの白紙状態でしたし、財源についても「連邦、地方(州)、民間」が協力するという言い方、つまり連邦政府としては経済的負担を渋るという言い方でした。
ということで、この「インフラ整備」が景気を引っ張るという感触は、現時点では全く生まれていないのです。そんな中で、4日の日曜日にはサウス・カロライナ州で貨物列車と特急列車が衝突事故を起こしていますが、ポイント故障によって2つの列車が同じ線路に入って正面衝突したというお粗末な事故であり、老朽化したインフラを象徴するような事件でした。