町の米屋は客が来ないという常識を翻したある米屋のイノベーション

MBA20180221
 

お米がスーパーやネットで手軽に買えるようになってからというもの、わざわざ「町のお米屋さん」に足を運ぶ人は減少傾向にあります。そんな危機から見事脱した米穀店の戦略とは? 今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、都内で人気のお米屋さんの戦略・戦術を分析しています。

フロントエンド商品とバックエンド商品

おいしい「おむすび(おにぎり)」を提供しているお米屋さんを分析します。

金井米穀店(米屋)

戦略ショートストーリー

お米にこだわりのある方をターゲットに「お米への一途な思い」に支えられた「美味しいお米が味わえる」「お米の相談に乗ってくれる」等の強みで差別化しています。

お米の違いを試食感覚で楽しめるよう、こだわりの「おむすび」を提供することや、1kgからの量り売りで試しやすくすることで顧客から支持を得ています。

■ 分析のポイント

フロントエンド商品とバックエンド商品

今回は、お米屋さんがおむすび(おにぎり)を販売する意味について考えてみましょう。

まず考えられるのは、来店の理由づくりです。米屋の店舗数が減少につながっている要因の一つにお米屋さんで、お米を購入する方が減っていることがあげられます。ですから、米屋にとって、まずは顧客がお米屋さんに行く理由を作ることが非常に重要になります。当たり前ですが、リアル店舗ではお客さんがお店に来てくれなければ買ってもらえませんからね。金井米穀店は、店頭にて150円のこだわりのおむすび(おにぎり)」を販売することで来店のきっかけをつくっているわけです。

二つめは、味を知ってもらえることです。こだわりの美味しいお米を取り扱っていても、Webや口頭での説明だけでは、そのお米の魅力を顧客に伝えきることは困難です。やはり、実際に味わうことが、百の説明に勝るでしょう。

三つめは、お米の購入につながるということです。おむすび(おにぎり)の味が気に入って、自宅でも試してみようと思った時に、購入しやすいよう1kgから量り売りをしていることも、購入を後押ししていると思います。

おむすび(おにぎり)の役割を整理すると

  1. 顧客を店舗に誘引して
  2. 味を知ってもらい
  3. お米の購入につなげる

という役割を「おむすび(おにぎり)が担っているというわけですね。

上記のような、「おむすび」と「お米」の役割をそれぞれ、フロントエンド商品とバックエンド商品と呼びます。

  • フロントエンド商品=売れる商品(集客商品)=おむすび
  • バックエンド商品=売りたい商品=お米

フロントエンド商品とバックエンド商品がうまくつながっていること、つまり、フロントエンド商品からバックエンド商品にスムーズな流れができていることが、ポイントになります。金井米穀店は、スムーズな流れを作ることができている好事例だと思います。

今後、金井米穀店がどのようにしてお米を中心とした食文化を次世代に正しく継承していくのか注目していきたいです。

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