アジア特化を模索せよ。国力の落ちた日本が再び輝くための条件

 

アベノミクスも国力増に結びつかず

一方、この5年間の安倍政治をにぎわしたアベノミクスの成果の実状はどうか。まず労働力人口(15歳以上の就業者と失業者の合計数)はリーマン・ショック時の08年とほぼ同じだが、正規雇用は43万人減少雇用者数は安倍政権下の4年で230万人(16年末で)増えているがうち207万人は非正規労働者なのだ。

また名目GDPは50兆円増え、過去最高の543兆円となったとしているが、物価上昇の影響を目標値から差し引いた実質GDPの増加率はリーマン前の水準を下回っており、名目GDPのドル換算率では4.4兆ドルで全体に占める割合は5.9%で、12年比では2.3ポイント下落している。賃金も上がっておらず実質生活は停滞しているため消費景気に結びついていないのである。

目ざましくみえた安倍外交の国際評価も芳しくはない。国際競争力ランキングは、GDP第3位の大国だが16年8位、17年は9位、GDPに占める教育支出の割合も16年32位。17年34位と高くないし、温暖化対策ランキングにいたっては16年60位、17年50位、世界幸福度ランキングも16年53位、17年51位、18年54位で、報道の自由度ランキングは16年72位、17年72位といずれも低いのが実状なのである(17年12月22日毎日新聞<※2>、18年3月15日毎日新聞<※3>より)

女性活躍時代も今ひとつ

また「すべての女性が輝く社会」をスローガンにしている安倍内閣だが、政治や経済、教育、健康の4分野での女性の地位を分析し数値化した順位では144か国中114位と散々だ。女性閣僚もわずか2人。約半数を占める北欧諸国と比べると話にならない。安倍首相は昨年6月の国際会議で「私が政権に復帰してからの4年間で働く女性は150万人増え、出産後も働く女性は初めて5割を超えた」と述べたが、日本が人口減少時代に入り女性労働を必要としているためで、実態は相変わらず安い労働力として使われているとみなす分析が多い。

国民の将来不安は消えず

安倍政権では、16年度に539兆円だったGDPを20年までに600兆円にしたいとしているが、GDPが増えて社会保障費が増えているかといえば必ずしもそうなっておらず、自己責任で将来不安に備えて欲しいというのが政策の実態だろう。これでは経済が成長しても将来不安はなくならず、国民は低い預金金利にも関わらず消費よりも預金に走っているのが実状だ。

安倍政権は外交に力を入れ、政権発足以来100ヵ国を越える国々をまわり、日本の存在感をアピールしてきた。日本を訪れた外国首脳や多国間協議の合間に行なった二国間首脳会議を数えると、おそらく300回前後にわたり外国首脳と会議を行なっている。しかし、首脳会議の数をこなしたからといって日本の存在感が増しているわけではない。

外国紙などの調査によると日本の世界における存在感は30-50位程度というのが多い。アメリカとの絆は深いがアジアやEUとの関係は、1970~90年の高度成長期に比べるとずっと低い。高度成長期は欧米の経済は停滞していたし、アジア諸国もまだ低開発国の域を脱していなかったので、高度成長をひた走っていた日本が眩く見え、それだけ存在感も大きかったのだろう。

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