自衛隊「日報問題」の背景に、「戦闘」という文字への過剰反応

2018.04.13
 

非戦闘地域だと言うから自衛隊のイラク派遣が認められたのに、日報には『戦闘』と書かれている。これは国民を欺いたことになりはしないか

2015年7月17日付の朝日新聞は、「イラク派遣、危険な実態 宿営地に砲弾10回超」として鬼の首でも取ったかのように政府を非難しました。

しかし、陸上自衛隊が派遣されていた2004年1月9日〜2006年9月9日の2年8か月間に10回超(別の資料では13回22発の砲撃があったということは、撃ち込まれたのは2か月半に1発の割合です。武装勢力が使う82ミリ迫撃砲のマニュアルでは、1門あたりの最大発射速度は1分間に15〜25発となっています。どんなに小規模な戦闘でも4門は使いますから、1分間に60〜100発は撃ち込まれるのです。軍事に関する世界の常識に照らせば、2か月半に1発飛んできたとしても、戦闘地域などとはみなされないのです。

こんな日本の状況では、日報に戦闘」という言葉が使われたというだけで、国会で追及され、マスコミにもたたかれることは明らかです。

そこにおいては、公表しないようにしよう、破棄してしまおうという心理が働くのは避けがたい面があります。

河野統合幕僚長だけでなく、小野寺五典防衛大臣も、そして安倍晋三首相も、今回の日報問題が日本的な政治的環境の中から生まれたことを、国会とマスコミに訴え、共通認識を持つよう働きかけなければならないと思います。

そして、真にシビリアンコントロールを機能させていくためには、政治的言辞非難の応酬に左右されない健全な環境の中で、未来を向いた自衛隊の活動の歴史が編まれていくことが不可欠、と問題提起してもらいたいものです。

マスコミの側も、例えば日本新聞協会の新聞倫理綱領にある「新聞は歴史の記録者」という立場から、戦史、あるいは自衛隊の活動の歴史についての理解を深めていくことを願ってやみません。(小川和久)

 

小川和久この著者の記事一覧

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEWSを疑え! 』

【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け