農村では、もっと深刻で、子どもたちが出稼ぎで都市に行ってしまい、残された祖父母が孫の面倒を見ている、その高齢の祖父母が病気になると、社会保障がしっかりしていないので、治療に非常にお金がかかり、どうにもならなくなり、絶望して自殺するというケースが増えているというのです。
政府は、年金や医療の改革を重要施策と考えているようですが、都市と農村の格差の大きさ、都市の中でも公務員と非公務員の格差の大きさが大きな障害になっているといいます。
制度の財源をどうするのかが最大の問題です。制度ができたとしても暮らすのにやっとの農村の人が年金や保険の掛け金を支出できるか、という深い課題があります。
極端な貧富の差は、国の仕組みをつくるのに大きな障害となります。国や家族に代わってボランティア団体などによる支援が始まっていますが、まだ十分に行き届いていないのが現実です。
一方で、「クローズアップ現代+」の中では、高齢化問題は、中国の経済成長の起爆剤でもあると言っています。中国の都市部では裕福な高齢者も増えていて、そういった人たちを対象にしたビジネスの市場は、2020年にはおよそ100兆円規模になると予測されています。これは日本の国家予算をも上回る額です。
で、高齢者100兆円の市場は、日本企業にとっても大きなチャンスとなる…と番組では紹介されていました。これを複雑な思いで聞きました。格差が広がり、福祉政策が追いついていない中国社会で、豊かな人たちを対象にしたビジネスが盛んになることで、追い詰められた高齢者はどうなるんだろう…。
経済成長戦略の一環で政府も後押しする高齢者対象の新ビジネスによって経済的な勝ち組には、豊かな老後が整備され、一人っ子の教育資金のため働きづめで、自分の親の面倒もみられぬ人たちは、結局、自分も子供に捨てられ、生きるすべを無くす…。
中国は、社会主義国家とは程遠い社会です。ヨーロッパ諸国に比べ、日本は、高齢者福祉も子育て支援も遅れていると思いがちですが、中国の現状を見ると、日本はまだましだと改めて感じます。
今、日本の高齢者の多くは、まだ、経済成長時代の恩恵を持っています。その枠から外れて事情を抱えている高齢者を地域の中で孤立させずに、支えていく力を持っています。余裕がある高齢の方の地域の中での社会貢献が問われていると感じました。
そして、子育て不安や教育費問題で子どもを産むのをためらうことがない社会を早急につくらなければ少子化は止まらない…ということを再確認しました。急がなくては!
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