訪日客激増で絶好調のビジネスホテル業界が抱える、意外な問題点

2018.05.01
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「新御三家」ルートイン、アパ、東横インの急成長

御三家は今も健在であるものの、ワシントンホテルは藤田観光が経営するホテルと、「ワシントンホテルプラザ」などを経営するワシントンホテルという会社が、連携して運営にあたっていたが、97年に分離している。サンルートは、JTBの子会社だったが、2014年に相鉄ホールディングスに買収された。東急インを経営していた東急ホテルチェーンは2002年に、東急電鉄の経営していたホテルを含めて、東急グループのホテル事業を行う東急ホテルズという会社に統合され、15年に東急REIホテルに名称変更されている。

現在のチェーンの数は、ワシントンホテルとサンルートは60ほど。東急REIホテルは20である。

新御三家バブル景気の頃に登場している。ルートインが1号店となる、「上田ロイヤルホテル」(現在の「上田駅前ロイヤルホテル」)を長野県上田市にオープンしたのは1985年だ。奇しくも、73年に東急の系列会社、上田交通が東急インの1号店「上田東急イン」(現「上田東急REIホテル」)をオープンしているが、上田駅を挟んで南側の温泉口に東急イン、北側のお城口に上田ロイヤルホテルが対峙する様相だ。

アパホテルは、1984年に1号店の「アパホテル金沢片町」を、石川県金沢市にオープンしている。

東横インは1986年、東京・蒲田に1号店をオープン。現在も「東横イン蒲田1」として稼働中である。

すなわち、新御三家がいずれも85年前後に相次いで創業しているのは、注目に値する。世間のバブルに浮かれる風潮に流されず、むしろ逆らうように、低コスト低料金宿泊特化を進めて体力をつけ、やがてバブル崩壊後の不動産値下がりに乗じて爆発的な事業展開に備えたのは見事である。

では、新御三家の現況と特徴を簡単に見ていこう。

今日、ルートインはチェーンホテル数で約287(17年11月1日現在)を数え、2025年には温浴施設やゴルフ場を含め500施設を目指している。年商は17年3月期で、1,146億2400万円(前年同期比13.3%増)だ。

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ホテルルートイン丸亀の外観。image by: WikimediaCommons(WebGroup)

ルートインのビジネスホテルの多くは郊外、特に高速道路のインターチェンジ付近に立地している。その戦略からして、駅前が基本の他のビジネスホテルとは差別化されており、不動産価格が安い分だけ宿泊も安くできるのである。

東京にもホテルがあるが、阿佐ヶ谷、東陽町、大井町、蒲田、五反田、浅草橋と、主要な繁華街を外しており、大きなターミナル駅ではアッパーブランドのアークホテルが池袋にあるだけだ。

眺望の良い大浴場を備えたホテルが多く、天然温泉であったり、人工温泉でもラジウムを使って健康増進に配慮したりと、力を入れている。大浴場があるから、部屋に風呂を設置せずに、その分間取りを広く取った設定もある。

ホテルルートイン熊谷の大浴場

ホテルルートイン熊谷の大浴場

本格的なレストランが1階に入居しているケースが多く、無料で提供される朝食バイキングは和・洋・中が揃い、ヨーロッパ直輸入のパンが提供されるなどお得感があり、これを楽しみにリピートする顧客も増えている

ルートインの朝食バイキング

ルートインの朝食バイキング

アパホテルのチェーンホテル数は建築中、海外も合わせて約415となっており、2020年までに提携も含めて10万室を実現し、ダントツのナンバーワンホテルチェーンになる目標を立てている。17年11月期(連結)の年商は1,161億200万円(前年同期比5.1%増)。現状、実際の国内のホテル数と年商は、ルートインと拮抗していると見られる。

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アパホテルは駅前立地を基本としているが、他社では手を出せない変形した土地を探し出して、周囲の相場より安く入手し実に巧くホテルを建てる。最近は500室を超えるタワー型の大型ホテルを強化する方針にあり、15年9月にオープンした「アパホテル新宿歌舞伎町タワー」は620室を擁する。来年夏にオープン予定の「アパホテル両国駅タワー」は1111室の予定だ。

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「新都市型ホテル」と称して、外観やフロントのデザイン性を高めてワクワク感を演出する一方、部屋の間取りを狭く取る、節水型の卵状浴槽で20%の節水効果、断熱カーテンで冷暖房効率を高める、全館LED照明で電気代を節約するなど、節約の思想が徹底している。

また、日によってホテルのニーズは変わり、価格も変わって当然という考え方から、繁忙期には平気で1泊3万円を取るなど、常にお手頃価格ではない独特な価格戦略を持つ。

また、ポイントカードは1P=1円相当と還元率が高く、5,000ポイントで5,000円キャッシュバックされるので、実質上値段よりも安く泊まれることになる。

東横インのチェーンホテル数は273(18年4月27日現在)。年商は17年3月末日現在で819億7,000万円(前年同期比1.2%増)。前年は年商が8.2%伸びていたので、伸び率にブレーキがかかった気もするが、今は巻き返しに向けて、会員の宿泊を取りやすくする、人員のリクルート、設備の早期更新を進めると共に精力的に出店している。

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新宿歌舞伎町の東横イン外観

コンセプトは「駅前旅館の鉄筋版」で、リーズナブルな価格と家庭的なサービスがモットー。価格は年中ほぼ一定で、いつも変わらない日常使いができるのを売りとしており、アパホテルと対極にある考え方と言えよう。

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表に掲げられた東横インの料金表。料金が年中一定であることを明示している

東横インは女性のきめ細かな感性を活かしたホテル運営を行っており、支配人をはじめフロント、メイクに女性を登用しているのも大きな特徴。旅館の女将のホテル版と言えるだろう。バスタブは日本人の好みに合わせ、ゆったりと深くなっている。また、全店舗同質のサービスと設備のクオリティを提供する証として、2007年よりISO9001を取得している。

朝食は無料だが、朝カレー、具だくさんの味噌汁、おにぎりなど家庭料理が中心になっており、ホテルならではのサンルート流朝食とは内容が異なっている。

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