訪日客激増で絶好調のビジネスホテル業界が抱える、意外な問題点

 

ビジネスホテル御三家、ワシントンホテル、サンルート、東急インの台頭

ビジネスホテルにとっては、インバウンドが牽引する観光客の増加は新たなビジネスチャンスであり、宿泊に特化しているからおもてなしは要らないと、言ってはいられない状況。いかに競合他社と差別化したサービスを提供して、リピートにつなげるかに知恵を絞っているわけだ。

業務出張用の駅、繁華街に近い、小型の宿泊特化型ビジネスホテルは以前から存在していた。地元の小資本であり、全般に薄暗く、部屋も狭くてシングルのベッドとユニットバスという最低限の設備がある簡素なイメージだった。

それに対して、統一したブランドで、もっとアメニティを向上させて全国にチェーン化しようという発想のビジネスホテルは、1970年代から勃興し、69年にワシントンホテル1号店の「名古屋第一ワシントンホテル」(93年閉館)がオープンしている。

程なくして、サンルート東急イン(現・東急REIホテル)も台頭して、ビジネスホテル御三家と呼ばれた。

御三家をはじめとする当時のスタイルは、ビジネスホテルにもかかわらず、宴会場、レストランを備えたホテルも多くあり、駅前で威容を誇るものが多い。すなわち、シティホテルの要素を取り込んで、従来の小型ビジネスホテルに対して、高級ホテルとの中間領域を開拓したと言えるだろう。

日本が高度成長から成熟化し、バブルに向かう過程で、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という本も79年にベストセラーになったほどで、経済界では盛んに量産型から文化的な付加価値が付いた高品質な商品に転換すべきと、論議がなされていた。ビジネスマンが出張で泊まるホテルにも付加価値が求められ、地元の宴会などのニーズといった社会的背景に応えたのが御三家であった。

しかし、バブル崩壊とその後のデフレ不況により、企業は経費節減に向かい、ホテルの宴会やレストランの法人需要は激減。なるべく出張をしない、しても日帰り、泊まるならより安くと、トレンドが変わった。御三家に代わってコスト意識の高い、1泊5000円前後で高くても1万円を切る、安価な宿泊特化型が選ばれるようになり、前出のルートインアパホテル東横インがビジネスホテルの新御三家として、君臨するようになった。

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