相次ぐ官僚の不祥事に「日本の死滅」を見た、生物学者からの警告

 

官僚機構ばかりではありません。私が関わっているアカデミズムやシンクタンクの世界でも、学問の自由や研究助成の公募などの仕組みは形骸化しており、どこを見ても一定の人脈に連なる「仲良しクラブ」ばかりで、新しい血が加わる余地は極めて限られています。これでは活力など生まれようもなく、嫌でも国際水準が求められる理系はともかくとして、文系から世界に認められる研究者が出たり、シンクタンクの政策提言が世界を動かすことなど、夢想だにできないほど低水準に終始しているのです。

そこにあるのは内輪ボメと自己満足と自己過信…。夜郎自大という言葉にさえ達しない井の中の蛙の状態なのです。タコが自分の脚を食べているのに似た日本の状況に前途はあるのでしょうか。

道がないわけではないと思います。例えば大学の活性化です。衆議院議員の岸本周平さん(国民民主党)は大蔵官僚時代に「ノーパンしゃぶしゃぶ」の一件で、キャリアに傷がつかないようにという大蔵省側の配慮もあったのでしょうか、プリンストン大学大学院の教員として2年間を過ごしました。そのときの経験は『中年英語組』(集英社新書)として出版されていますが、英語で苦労した話が日米の比較文明論としてまとめられており、非常に参考になる本です。

その中の一節に、プリンストン大学の大学院が入学者を「1校1人」に絞っていることが紹介されていました。例外として、ハーバード大学などトップレベルの大学からの複数入学は認められているものの、原則として「1校1人」、それも「最優秀でないと受け付けないというのです。

そうなると学生側も頭を使います。有名校で1番になるのは至難の業ですから、わざわざ1番になりやすいレベルの大学を選び、そこからプリンストンの大学院に入ってくるというのです。むろん、自己研鑽を積んでいますから、有名校でなくても能力は高い水準にあります。かくして、プリンストンの大学院は「血族交配」の弊害を回避し、活力を保仕掛けになっているそうです。

統合失調症に悩まされた数学者のジョン・ナッシュ(1994年、ノーベル経済学賞)に最後まで研究室を提供したプリンストン大学ですが、その高い水準を支えている「戦略」ともいうべき発想は、大学のみならず、日本の国家が参考にしてよいものだと思います。

image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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