3兆円のムダ遣い。六ヶ所再処理工場という「危険な無用の長物」

 

国は原発から出る使用済み核燃料をすべて再処理にまわすよう義務づけ、そのほとんどは英国とフランスに委託してきた。

日本としては、「東海」の運転によってノウハウを積み上げ、独力で本格的な六ヶ所再処理工場(青森県)をつくるという目論見だったが、結局のところ、六ヶ所の建設についても再びフランスを頼るほかなかった

しかも企業個々の利権がからみ一貫性のない設計となったためトラブル続きで、いつまでたっても完成に至らない。それが六ヶ所再処理工場の現実だ。

6月17日の朝日新聞朝刊一面トップに「日本のプルトニウムに上限」という見出しの記事が掲載された。

政府は、原発の使用済み核燃料を再処理して取り出した「余剰プルトニウム」の保有量に「上限」を設け、余剰分が増えないよう対策を強化する。建設中の六ヶ所再処理工場の運転計画を認可する際に、プルトニウムを使う量に応じて再処理できる量を制限する。

2021年の完成をめざす六ヶ所再処理工場がフル稼働すれば、年に約8トンの余剰プルトニウムが増える。だが、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まり、核燃料サイクルが絵に描いた餅となった今、「MOX燃料」くらいしかプルトニウムの使い道はない。

それなのに国内に約10トン、英仏の再処理施設に約37トン、合わせて47トン原爆約6,000発分)をすでにかかえている。日米原子力協定で例外的に再処理を認めてきた米国政府からもプルトニウムの削減を求められており、対策が必要になったというわけだ。

具体的には、取り出したプルトニウムとウランを混ぜて普通の原発で使う「MOX燃料」に応じた分量だけしか新たなプルトニウムの取り出しを認めないことにするという。

しかしここで疑問がわく。現在、再稼働している9基の原発のうち「MOX燃料を使うプルサーマル発電を導入しているのは4基に過ぎない。すでに47トンものプルトニウムがあるのに、これ以上、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す必要があるのだろうか。

つまるところ、六ヶ所再処理工場じたいが不要なのである。再処理が必要なら実績がある英仏に頼んだ方がはるかに安くつくことも知られている。

ところが、六ヶ所再処理工場にはこれまでに3兆円近い資金が投入されているのだ。

事業主体の日本原燃は、電事連所属の電力各社(沖縄電力を除く)と日本原子力発電の出資した会社だが、電力各社から日本原燃に注ぎ込まれるカネは、もとはといえば国民が支払っている電気料金である。

しかも「21年の完成をめざす」とはいえ、さまざまなトラブルでこれまで竣工が23回も延期されている。

このほど廃止が決まった東海再処理施設にもあった重大な欠陥が、六ヶ所村再処理工場でも是正できないまま建設が進められた

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