日本の大手企業では、店舗よりも上の立場に「本社」や「本部」「本店」などがあるのは当たり前。しかし、そんな経営方法に頼らず、常に店舗が主役という企業があります。無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、そんな飲食店『牛たん「ねぎし」』の経営理念と、世にも珍しい人事制度について語った根岸社長へのインタビューを紹介しています。
「ねぎし」のユニークな人事制度
牛たん、とろろ、麦飯のランチで定評がある「ねぎし」。かつての売り上げ重視から理念重視への転換を果たした「ねぎし」のいまを根岸社長にお話しいただきました。
──価値前提への転換で会社はどのように変わっていきましたか?
やはり、皆が自主的になりましたね。自分で考え自分で判断し自分で行動できる社風になったことは大きいと感じています。
例えば、「ねぎし」は現在39店舗を運営していますが、本社や本部、本店というものが存在しないんです。普通であれば店舗の上に本部、本社があって年商を各店に割り当てて、それが実行できているかを管理、監督します。うちは逆なんですね。
──逆というと?
私どもの場合、本部機能はサポートセンターですから、各店の売り上げや利益がいかに上がるかをいろいろと手助けする役割に徹します。
当然、年商や月商は各店長が決め、それを達成するための行動計画も店長が立てます。上からの指示で動くのではなく、従業員が計画段階から参加することで、自ら取り組もうとする仕事の姿勢が高まるんです。
──経営理念をいかに全体で共有できるかも大きなテーマですね。
アルバイトを含めて入店前研修で真っ先に教えるのが経営理念と、それに対する私どもの思いなのですが、他にも人事制度でユニークな改善をしています。
人を育てた従業員ほど高く評価されるというもので、これは他にない独自の制度だと思っています。
従業員が辞めていく理由の7割は人間関係なんです。しかし、人をどう育てたかを人事評価に盛り込むことによって上司は自ずと部下に関心を持って近寄り、教育し成長させていくことになります。
社内の人間関係がよくなってこそ、お客さまの喜びを自分たちの喜びとし、親切と奉仕に努めるという経営理念が実現できるんです。
──従業員さんの意識も変わっていったのですね。
「ねぎし」の企業文化を形成している基本的な考え方に「思い8割、スキル2割」というものがあります。
スキルを高めることは、もちろんとても大事で、私どももお互いに切磋琢磨しながらスキルを向上させる仕組みも多く準備していますが、ただスキルだけがあっても思いがないとお客さまの真の満足には繋がらないんです。
「理念共有」と「人財共育」をとおして本当の意味での働く喜びを知った従業員たちが、新しい時代の中でいかに顧客価値を創造していくか。そのことが100年企業への道をひらく大きな鍵だと思っています。
image by: 『牛たん・とろろ・麦めし ねぎし』公式ホームページ