小5女児「いじめ自殺」、SOSを見て見ぬフリした学校の隠蔽体質

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教育の現場で頻発する「いじめ」を見つめ続けてきた、無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』。今回の記事で代表の井澤一明さんは、いじめに関して新しい取り組みを始めた自治体などについて紹介しつつも、教育現場の「事なかれ主義」や隠ぺい体質、責任逃れは相変わらずで、いじめ問題を抱えた子どもたちに頼られるような活動や体制づくりにむけた改革が急がれる、と訴えています。 

子どもたちから信頼される「相談体制」が求められる

夏休みが目前に迫ってまいりました。私たちのところへの相談も毎日届いています。高校生が、部活で吊し上げにあって、校長に相談したら「学校の対応が悪かったので謝罪いたします」と言ってはくれたのですが、「加害生徒が心から悪いことをしたと思うかどうかは本人次第ですので、謝罪をするように指導はできません」と逃げてしまったという相談もきています。校長が責任を放棄したのでは何事もすすみません。

また、私立の小学校でも「金、もってこい」、「死ね」などと脅されたので学校に相談したところ「加害生徒とその保護者には伝えました。ただ学校は両者の間には入りませんので」と謝罪の会も開いてくれないというのです。

責任を放棄し、さらには隠蔽を図る学校が跡を絶ちません。報道によると、去年、兵庫県多可町で小学5年の女子児童が自殺した問題で、第三者委員会は「いじめ」が自殺の要因だったと認定しました。同委員会は、学校が児童のSOSを見逃し、積極的な関与ができなかったことを指摘すると共に、組織的な対応の重要性を掲げています。学校側は「女児からいじめの訴えはなかった」としていたのですが、実際には、女児が4年時のアンケートで3回、「はい」に○を付けてから消し、「いいえ」に○を付けた形跡があったことがわかりました。また、他の児童からもいじめられているとの指摘があったことが判明いたしています。女児は年2回の「ストレスチェック」でも高いストレスへの移行がみられていたとのことです。

第三者委は、学校が表面的な対応にとどまったこと、女児の苦痛をキャッチできなかったと指摘し、要因として、

  1. いじめの組織的対応が未整備
  2. 前思春期の女子グループの理解不足
  3. 学校の統廃合による教職員の多忙

をあげています。第三者委員会はよくやったと思いますが、学校はSOSを見逃したのではなく、故意に見ようとしなかったとしか思えない内容です。事実であるなら、学校による組織的隠蔽があったと言わざるを得ません。学校が隠蔽すればするほど、教員の時間と労力を無駄に消費するだけです。さらに、学校の評判や自治体の評判まで貶めてしまうことになります。

残念な対応をし続ける学校がある一方で、いじめに対する新たな取組みも進み始めています。同じ兵庫県では通信アプリ「LINE」を使った無料通話相談を始めています。「LINE」のサービスを利用し「友だち登録」すると専用のアカウントにアクセスでき、無料通話機能を使って精神保健福祉士や臨床心理士らが相談に応じるシステムとのことです。

このSNSを利用したいじめ等の相談機能は、全国的に広がりつつあります。6月1日には、北陸で初めて、富山県がLINEによるSNSいじめ相談を始めています。茨城県でも、1月の取手市に続いて牛久市でも専用アプリ「STOP it」を導入しての相談が開始されました。

しかしながら、相談システムを立ち上げただけでは意味がありません。保護者の皆様には、この相談体制が本当に機能するようになるかどうかを、見守っていただきたいと思います。積極的な意見を自治体に対してお伝えいただきたいと思います。

簡単に解決できると言うと語弊があるかもしれませんが、いじめ解決の秘策があります。電話でも、メールでも、SNSでも構わないのですが、相談を受けた教育委員会が、該当する学校に対して「そちらの学校の○年○組の○○さんから相談がきました。至急、いじめを対処して、明日までに教育委員会に報告書を提出してください」と連絡をするだけで、大抵のいじめは解決するはずです。

なおさら、文科省の「24時間子供SOSダイヤル」の電話に入ったものは「文科省まで報告書を提出すること」にしたら学校は本気で取り組むはずです。そうすれば、「いじめは一日で解決できる」と私たちが訴えておりますように、まさに「いじめ解決は一日で足りる」ということが日本の常識になります。

隠蔽を画策する学校があります。子どもたちを守りたいという対策もあります。「いじめ問題」を解決するためのポイントは、「解決するかどうか」にかかっています。何度も繰り返し述べていますが「早期発見・早期解決」しなければ意味がないのです。

子どもたちの中に、「あそこに相談したら解決してくれる」という評判が立てば、電話相談でもSNS相談でも相談する子は増えてきます。子どもたちからの「信頼を得ること」、それは「いじめを解決できる」という実績を積み上げていくことが必要です。教師、保護者を中心に大人たちが力を結集して、日本のどの地域においてもいじめを「解決できる」ような体制を作り上げていかなければなりません。

さあ、まもなく夏休みです。夏休みを前にして、いじめを持ち越さないことが大切です。早めに学校と相談して、夏休み前に解決してあげてください。不安に思うことがございましたら、ご遠慮無くご相談ください。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

image by: shutterstock.com

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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