ディーラーによって熱意に差が出る
リトルツリーは、創業して14年になるが、吉髙社長が家具デザイナー出身であることから、木製の遊具や玩具を、東京・門前仲町の工房で手作りしており、安全性が高い。レンタルでキッズコーナーに導入する方式を取っているが、専門の業者を入れてまでキッズコーナーにコストをかけようというディーラーは増えているものの、まだ主流ではない。
子供に飽きられないように年に3回、訪問して商品を取り換える。サスティナブル(環境や社会へのやさしさ)をコンセプトとしており、回収した木の玩具はもう一度すり減った部分を削るなどメンテナンスをして色を塗り直し、別の店に持っていく。
100ほどあるディーラーのクライアントのうち、トヨタ系が7割、残りは2、3件あるホンダ系を除いてマツダ系という。
吉髙氏によれば、トヨタ系以外では、最近はマツダ系が熱心にキッズコーナーに取り組みだしているが、外資系はほとんど無関心な傾向がある。日産は4、5年前に2つの系列の販社が統合して一本化され、その際にキッズコーナーが一斉に導入されているが、子供の心をつかむまでの内容に至ってない傾向があるようだ。
一方、2007年にキッズコーナーに進出し、1000ヶ所以上の納入実績を持つ、アートディスプレイ(本社・大阪府箕面市)の安藤邦昭社長によれば、最もディーラーで導入が進んでいるのは、ダイハツも含めたトヨタ系。遅れているのは、三菱自動車系、スバル系という。外車はヤナセの販売店なら、導入が進んでいる。安藤氏の目にも、「最近のキッズコーナーのレベルアップは特筆すべきこと」と映っているが、ディーラーによって熱意に差がある。
独身の頃、車を必要な時にレンタカー店で借りていた人も、結婚して子供が産まれると、子供のためを思って購入に踏み切るケースが増えている。だからディーラーも子供を主役に考えないと車が売れないのだが、「CS(顧客満足度)アップのツールになっていないケースも多い。子供が喜んで遊ばないところは、キッズコーナーではない」と手厳しい。夫婦が車の販売店で商談を進めている間、子供が親元に戻らず夢中で遊んでいないと、車の購入どころではなくなって、キッズコーナーの機能を果たさないからだ。
アートディスプレイでは、従来2畳ほどのスペースだったキッズコーナーを、せめて3畳以上に拡充するよう提案している。ショールームは25~30年に一度リニューアルをするが、そのタイミングで入るのを目指している。
専用ペンで描いて乾くと消えるボード「おえかきパタ☆ポン」や、裏面にマジックテープを取り付けたベンチ・マットと、毛足の短いカーペット素材が一体化してガッチリ固定する「ジョイントベース」などといった独自商品を開発。子供がマットを投げたり、ベンチを外して振り回したりと大人の想定外の遊び方をしてケガをするのを防ぎ、大人しくお絵描きで遊べるような環境づくりを行っている。子供の安心、安全を考慮して、国内の材料を厳選して、全て国内で生産している。
以上、見てきたように、カーディーラーでは全般にキッズコーナーの導入が進んでいるが、最も差別化した取り組みを行っているのはトヨタの販社である。全てではないが、トヨタの販社の中には、キッズコーナー専門業者に導入とメンテナンスを任せてCSを向上させている店が増えている。その導入効果として、トップクラスの販売実績を上げるディーラーが続出していると言えるだろう。
Photo by: 長浜淳之介