車離れの今、なぜトヨタのディーラーばかり車が売れまくるのか?

IMG_1984
 

近年、自動車の販売台数は「若者の車離れ」や「少子高齢化」などの理由により減少傾向にあります。しかし、そのような状況下でも業績を大きく伸ばしている自動車ディーラーが、店内の「キッズコーナー」の充実を図っているトヨタ車の販売店。そもそも、なぜ自動車販売店に「キッズコーナー」が必要なのか、そこには「時代の流れ」が大きく関係しているようです。フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんが、なぜトヨタがそこまで「キッズコーナー」を充実させているのかを現地取材し、業績UPとの因果関係について分析しています。

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名儀)など。

キッズコーナーの「カイゼン」でも先端を走るトヨタ

自動車のディーラーがキッズコーナーを強化している。キッズコーナーが充実している店が、業績を伸ばす傾向が強まっているためだ。

日本自動車販売協会連合会の発表によれば、国内の乗用車の販売台数は、直近のデータでも2014年の約556万台が17年には約523万台へと漸減している。人口の減少と高齢化、若者の車離れ、景気が回復し切れていない状況が指摘される中、一般のコンシューマーをターゲットに車を売るディーラーも、全般に苦境に立たされており、ファミリー、特に財布を握っている子育て世代の女性の心をつかもうと懸命だ。

「もう5年ほど前からの流れとして、どこのメーカーのディーラーもキッズコーナーに力を入れるようになっている。あるのが当たり前」(ネッツトヨタ東京)という声も聞かれる。

しかし、そうした自動車業界の流れの中でも、キッズコーナー設置にとりわけ熱心なのはトヨタのディーラーである。トヨタの自動車販売が、総じて景気に関係なく、高い実績を上げているのは、日本中の販売店にキッズコーナーを隈なく設けてカスタマーサービスを向上させて車を売る姿勢も寄与している。

元々はメーカーのトヨタ自動車のほうから各販社に対してキッズコーナーをつくるように要請があり、具体的にどのような展開をするかは各販社に委ねられた。従って、各店によって充実した施設を持つところから、とりあえず設置したというレベルのところまであり、トヨタのディーラーでもキッズコーナーの展開に差が出ているのが実情だ。その差が顧客満足度に影響を与えひいては売上の差につながってきている。

車も、もう良い製品ができたから、それだけで売れる時代ではなくなった。操作性、居住性、安全性、燃費などといったスペックや、フォルムやカラーなどといったデザインばかりではなく、価格に加えて、売る側の環境づくりが重要になってきている。その象徴がキッズコーナーなのである。

IMG_2013

レクサス千葉中央、キッズルーム内観

キッズコーナーの設置と商品レンタルを行うリトルツリー(本社・東京都江東区)の吉髙江社長は次のように語る。

「車というものは1回で売れるものでなく、お客様が3回、4回と来店して詰めて行くわけです。ご両親が販売員と打ち合わせている間、小さい子供は退屈してしまいます。そこでキッズコーナーが必要なのですが、子供が最低でも30分は飽きないで遊んでいられないと意味がありません」。

せっかくキッズコーナーをつくっても、子供が10分で飽きてしまうような代物なら効果がない。吉髙社長によると、滑り台、ジャングルジムのような全身を動かすものは、感情が高揚して子供はすぐ飽きてしまうのだという。頭を使うものなら夢中になって静かに遊んでいる

また、ディーラーの社員が子供の喜びそうな玩具をかき集めてキッズコーナーを展開しても、メンテナンスが行き届かず壊れた玩具が無造作に置かれていたり、ぬいぐるみがあるだけの寂しい状況だったりのような施設も多い。それでは親子共に寄り付かない。ひととおりキッズコーナーが行き渡った現状では、質が問われるようになってきている

吉髙氏によれば、トヨタのディーラーは全般に消費者のニーズに寄り添ったキッズコーナーの改善でも先端を走っているとのこと。そういった事例を紹介してみたい。

print
いま読まれてます

  • 車離れの今、なぜトヨタのディーラーばかり車が売れまくるのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け