車離れの今、なぜトヨタのディーラーばかり車が売れまくるのか?

 

子供の心をつかんだディーラーが、販売競争に勝つ

埼玉県越谷市にある、2008年に開業した巨大ショッピングセンター「イオンレイクタウン」を構成する商業施設の1つ「イオンレイクタウンmori」1階に、埼玉のトヨタのディーラーが一堂に集まるトヨタモール」がある。「トヨタモール」は、「埼玉トヨタ」、「埼玉トヨペット」、「トヨタカローラ埼玉」、「ネッツトヨタ東埼玉」、「ネッツトヨタ埼玉」で構成され、レクサス以外の全販売チャネルが集結している。修理工場も兼ねている。

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カローラ埼玉イオンレイクタウン店外観

買物がてらにトヨタのあらゆる車種を見ることができるメガショールームの試みで、横浜市港北区にほぼ同じ時期に開業した「トレッサ横浜」では、同様のことをトヨタの系列会社が経営する商業施設で行っている。

販売チャネルごとに扱う車種も異なり、それぞれにキッズコーナーが設けられているが、中でも目を引くのは「トヨタカローラ埼玉」である。「トヨタカローラ」のショップでは、カローラ各種、プリウス、エスティマなど、ファミリー向けの車種を中心に取り扱う。「トヨタカローラ埼玉」イオンレイクタウン店では、顧客満足度アップの武器としてキッズコーナーを積極的に活用している。

「若い人たちは免許を積極的に取ろうとしないのですが、結婚して子供ができれば、移動手段として車が必要になります。保育園、幼稚園、小学校への送り迎えに欠かせないからです。車を平日に使うのはお母さんと子供なので女性子供の目線でショールームもつくらないといけないのです」(トヨタカローラ埼玉イオンレイクタウン店販売マネジャー・桐山仁志係長)。桐山氏は、年間新車最多販売賞を受賞したトップセールスマンである。

従来は、車というと男性が運転して女性が助手席に乗るイメージだったが、埼玉あたりだと夫は自転車と電車を使って通勤、車を使うのは休日だけという家庭が多い。主役が子供なので、ドアも蝶番式のタイプは好まれず、乗りやすいスライド式が売れる。妻にとっても、スライド式のほうが、買物をした荷物の運び込みが容易というメリットがある。

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埼玉・イオンレイクタウン店の「トヨタモール」。埼玉のトヨタディーラーが一堂に集まる

車を求める人はインターネットで情報を集めているが、いよいよ購入となると、現物を見て、となる。どの車を買うのか、夫婦である程度の合意の上で来店して、交互にキッズコーナーで子供の面倒を見ながら商談を進めるケースが多い。

見た目の格好良さ、スペックの優秀性より、女性と子供にとってどれだけ使いやすいかが購入の基準であり、車庫入れやバックが難しいイメージがあるワンボックスカーも売れなくなってきているという。女性は、運転に苦手意識がある人が多く、そんな自分でも安心して乗れるかが最も重要で、男性が求めてきた走行の性能や斬新なデザインは二の次なのである。

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カローラ埼玉イオンレイクタウン店の「キッズコーナー」

10畳ほどあるキッズルームは、リトルツリーのプロデュース。全て木製の電車や線路、車、道路などを組み合わせて、立体交差をつくったり、鍋やコンロ、お皿、野菜などを使ってままごとをしてみたりと、頭を使う玩具を提案している。子供が考えながら遊ぶので、30分くらいは飽きずに過ごすことができるのだ。

同店のキッズルームは子供に人気があり、モールに買物に来たファミリーに開放している。車を購入しない人たちのほうがより多く利用している状況で、休日はいつも満員状態になる。販売には直結しなくても構わないのだそうだ。キッズルームからトヨタのショールームに親しみを持ってもらえれば、いざ車が必要となった時に自然と選ばれるからだ。まさに子供の心をつかんだディーラーが、販売競争に勝つのである。 

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