超最狂の「エイリアンバー」でマニア達にお話を聞いてみた結果…

2018.10.05
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by MAG2 NEWS編集部(シュウマイ)
ビックチャップ左
 

来年(2019年)はリドリー・スコット監督による映画「エイリアン」が公開されてから40周年になるってみなさんご存じでしたか? 第1作目はシガニー・ウィーバーがタンクトップ姿で戦うシーンが印象的でしたね。とても強くてセクシーです。

それはさておき、エイリアンといえばあの前後に細長い頭部するどい指先長い手足という“あの姿”を想像するのではないでしょうか。

ビックチャップ 手

すでにご存じの方も多いかと思いますが、シリーズを通して「エイリアン」の形態は一種類だけじゃありません。例えば、卵を産むのは「エイリアン・クイーン」で、そのクイーンが産んだ卵が「エイリアン・エッグ」、そして卵からかえって人間の顔に張り付くのが「フェイスハガー」というように、一口にエイリアンといっても形態や寄主のタイプによって呼び名が異なり、姿も変化していきます。

このように多様なエイリアンの中でも圧倒的な人気を誇るのが、第1作目に登場した「エイリアン・ビッグチャップ」。通称ビッグチャップと呼ばれており、“あの姿”の原型になった初代エイリアンです。このビッグチャップ は偉大な造形デザイナー、H・R・ギーガー氏によってデザインされ、映画公開から約40年経ったいまでもその形は受け継がれています。

そんなこんなで前置きが長くなってしまいましたが、某月某日におこなわれた、映画・アメコミフィギュア専門店「豆魚雷」さん主催の期間限定コンセプト・バーエイリアンバー」に潜入してきました!

今回、世界で初めて完全再現されたビックチャップ・スタチューのお披露目も兼ねていたので、かなりマニアックなお話が聞けましたよ。

期間限定のエイリアンバー

会場はSF映画とアメコミをモチーフにしたレストラン・バー「新宿FLUX」さん。映画・アメコミのフィギュアなどを扱っている豆魚雷さんとの相性バッチリですね。会場に着くなりバットマンがお目見えましたが、今回のお目当はエイリアン

バットマン

今回お披露目されたビックチャップ・スタチューのフィギュア、どうやら海外でも「クレイジーなフィギュアの製作が行われている」と、かなり注目を集めている模様。今回は製作に携わったプロデューサー・ディレクターの原田プリスキンさんにかな〜り濃く解説をしていただきました。


(談):原田プリスキンさん

3分の1スケールのエイリアンをスタチューとして立体化しようという、今回のプロジェクトは4人のメンバーで構成されています。

プロデューサー・ディレクターの僕と、実際に造型を担当した藤本圭紀さん、資料を提供してくださった三島わたるさん、名古屋の大日本工房の工房長の榎本龍彦さんの4人です。

原田さん

左:藤本圭紀さん、右:原田プリスキンさん

三島さんとは20年来の付き合いです。三島さんがオーナーを務めるPSYCHO MONSTERZ(サイコモンスターズ)は現在エイリアン・プレデターの専門店ですが、当時はお店ではなくコレクターサイトだったのです。そこに設置されたBBSに、日本中のエイリアンマニアが集まっていました。

エイリアンのスーツは、中に入るボラジ・バデジョという人が着るために、彼の型を取った、マネキンに粘土や動物の骨、パイプ、機械の部品などを貼り付けて作られました。またその原型をさらに型取りしてスーツを作るのですが、三島さんはそのスーツになる前の原型の複製品を持っているすごいコレクターなのです。今回は2週間かけて高性能の3Dスキャンで、その複製品を撮って3Dデータにしていただきました。

榎本さんとの出会いは、20年前に僕がオークションサイトでエイリアンのアイテムを落札したことがきっかけです。家が近いということで会いましょうとなり、知り合いました。しかも、榎本さんもサイコモンスターズの住人だったんです(笑)。榎本さんはエイリアンマニアでもあるし、映画自体の小道具について研究している研究者です。エイリアンの資料も山ほど持っているので協力していただきました。

そんな日本の業界屈指のエイリアンマニア4人が集まって作られたのが今回の「エイリアン/ ビッグチャップ 1/3スケール・スタチュー」です。

ビックチャップ左

「エイリアン/ ビッグチャップ 1/3スケール・スタチュー」

スイス出身のH・R・ギーガー氏によって作られたエイリアン・ビッグチャップは、演出上、作中のなかで全容を把握することができませんでした。というのもメイキングブックの最後のページに掲載された、“かがんだビッグチャップの写真1枚”でしか全身の姿を知る由がなかったのです。

ドイツ・スイス調査 縦長

スイスとドイツでの現地調査の様子

チームはエイリアン(79’)の撮影当時に残されていた数々の写真を最新の高解像度の状態で入手。かなり細部のディテールまで検証を行い、膨大な資料を徹底的に洗い出しました。とはいえまだまだ不明な部分が多かったため、僕と藤本さんの2人で、H・R・ギーガー氏の出身地スイスにある「H・R・ギーガー・ミュージアム」、ドイツの「フィルム・ミュージアム」まで現地調査に向かいました。

ドイツ・スイス調査1

旅のお供も「ビッグチャップ 」

「H・R・ギーガー・ミュージアム」のある駅に降りると、牛とか羊とかがいる牧草地でした。「こんなところにあるのかな?」なんて思っていると、石畳の村とお城が現れました。そのお城の一角が「H・R・ギーガー・ミュージアム」だったのです。デザインデッサン、絵画、家具など、H・R・ギーガー氏が制作した数々の作品が展示されていますが、僕たちの目当てはエイリアンの全身立像。2日間にわたって実地検証を行ってきました。

ちなみに今回のエイリアンバーは「H・R・ギーガー・ミュージアム」に併設するバーを意識しています。メニュー表からドリンクまで、かなり再現度は高いですよ!

メニュー1

メニュー表は限定プレゼント

モヒート×グルート2

ギーガーモヒート

そしてドイツの「フィルム・ミュージアム」にも出向き、調査を行いました。「フィルム・ミュージアム」には映画で実際に使われたエイリアンのスーツが飾ってあります。他にはダースベーダーのマスクなどもありましたが、僕たちの目当てはもちろんエイリアン(笑)。

チャックがあった証拠写真

600枚撮った写真の一部

ドイツの「フィルム・ミュージアム」は写真撮影が可能なので、600枚以上の写真を撮ったのですが、学ぶことがとても多かったです。エイリアンの造形は分からないことだらけなのですが、現地調査では驚きや新発見がありました。「ここはこうなっていたんだ」とか、「ここで分かれているんだ」とか、チャックがあったんだ、足の裏ってこうなってたんだって。

映画のなかでは足の裏が映っていないんですよね。実際にエイリアンのメイキングでも全然足の裏が写っていなかったんです。ネットでも、エイリアン撮りました的な写真は多いけど、足の裏を狙って撮っている人はいません(笑)。僕たちは細かく細かく、調査してきました。

「日本製の灯油ポンプが使われている」のは常識?

ポンプ部分

パイプや灯油ポンプなどが使用されている

エイリアンのスーツには、日常で使用されているパイプなどたくさんの既製品が使われています。その既製品にある文字なども解析してフォントまで再現しています。これまで生粋のマニアでも気にしたことのないような部分にフォーカスを当てて研究しました。

よく見るとJISマーク

よく見ると・・・

よく見るとJISマーク

JISマーク!

エイリアンに日本製の灯油ポンプが使われているというのは僕らからしたら常識ですが、もちろんチューブの灯油ポンプにあったマーキングも忠実に再現しています。

分析から生まれた「イかれた」再現度

アゴの部分

蛇腹になっているアゴの部分

エイリアンの顎は映画では影になって見えなくて、今まで具体的な形状が分からなかったんです。過去にディストーションズという海外のマスクメーカーからエイリアンのマスクが発売されました。そのマスクはエイリアンの映画で出てきた実際のマスクから型どられたものと言われていたんですね。そのマスクの顎の裏と、ドイツのスーツの足の裏の造型が一致したのです。

さらに高解像度の写真から、首元の一部も同じ形状ということがわかり、同じパーツを顎裏、足の裏、首元で使いまわしていることが判明しました。つまり、ディストーションズのマスクの顎の裏の造型の由緒が証明されたのです。そこでディストーションズのマスクのスキャンデータを三島さんに提供してもらい、正確な造型を再現することができました。もっと細かい部分に関しては、型の合わせ目(パーティングライン)チャックまで再現しています。

型をとった際のつなぎ目

左足 チャック

左足のチャック部分

今までの謎を全て解明した上で再現

分析図2

エイリアンのスーツは上下が分かれているので、屈むと背中が見えるようになっています。背中の部分に関しては作る上で必ず再現しなくてはならないところでしたが、謎が多すぎて解明するには大きな課題となっていました。

分析図

細かい部分まで設計図に落とし込む

背中の部分は資料をいろいろと集めて、仮説を立てて、それらを踏まえた上で製作しています。また、実際はスーツと中に入っている人のお尻の位置は若干ずれていたということも分かりました。ボラジ・バデジョに合わせて作られてはいるのですが、屈むという動作は通常と異なるので腰の位置がずれるようになって、ちょっと腰履きみたいになっています。

ビックチャップ腰

お尻には尻尾がついていて、支える部分が硬くなっているので、屈んでも追従してきません。なので中に入っているボラジ・バデジョの腰の位置とエイリアンスーツの腰の位置が若干ずれてしまうのです。立っている分には分からなかったズレですが、屈んでいることによって分かりました。

海外からは「狂っている」と賞賛の声が

足の裏も顎の裏も、腰の部分も全て今まで分からなかった箇所も、構造を理解して再現したのは今回が初めてだと思います。また、映画製作時に撮影された大判写真も入手したので、かなり貴重なお披露目になったと思います。

ビックチャップモデル写真

今回、特別に撮らせていただきた映画製作当時の写真

今回のスタチューはすでに海外の方では写真が話題になっているみたいです。insane正気ではない)とか、accuracy正確さ)とかって(笑)。「エイリアン/ ビッグチャップ 1/3スケール・スタチュー」はこれからのエイリアンフィギュアのスタンダードになって、新たなリファレンスのような扱いになっていけばいいなと思います。


というわけで、豆魚雷さん主催の期間限定「エイリアンバー」潜入取材、いかがでしたか? 当日は、多くの来場者が「エイリアン/ ビッグチャップ 1/3スケール・スタチュー」に釘付けになっていました。

何しろ、ここまで細かく分析して正確に再現したエイリアンの造形物は、世界でも初めてですから。。。

MAG2 NEWS編集部も、この「最狂にクレイジーでマニアック」なイベントに圧倒されてしまいましたが、来年もしも公開から40周年を記念してイベントが開かれるようでしたら、豆魚雷さんたちが主催するイベントも今回以上の内容になるのではないでしょうか。

「エイリアン愛」に溢れる日本のマニアのみなーさん、次に行われるイベントをチェックしていてくださいね!

エイリアンスタチューの特設ページはこちら

撮影:編集部

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