逗子に出現した「本格料理」を提供する海の家
逗子、由比ガ浜ではイメージアップをはかる新たな試みも始まっている。
逗子海水浴場に、今年初めて海の家を出店したのは、結婚式場やレストランを運営するノバレーゼ(本社・東京都中央区)。同社が海の家を出すのは初めてで、社内コンペの結果、入社2年目の女性社員のプランが通り代表者となっている。
店名は「YOLO PACIFIC」で、“YOLO”は“YOU ONLY LIVE ONCE”の頭文字。「人生一度きり、この瞬間を思い切り楽しむ、駆け抜ける」がコンセプト。白を基調としたレストランタイプの店で、脱衣場やシャワーはない。席数32席。
料理のレシピを、ハリウッドスター御用達であるニューヨークのイタリアン「セラフィーナ」の日本総料理長などが考案しており、インスタ映えも狙っている。お酒はレモンをタワー型に積み上げたレモンサワーなど、“進化形レサワ”が売りだ。ここまで本格的に料理に取り組む海の家は珍しい。
出店にあたっては、6、7時間をかけて、音響設備の設置の仕方、ごみの出し方、客引きのルールなどの説明があり、音響設備は最終的に海水浴場組合のチェックが入る。騒音に関する市民の苦情をなくすことに、逗子海水浴場では神経を尖らせている。
由比ガ浜には元アイドルがプロデュースした「海の家」も
由比ガ浜海水浴場では今年、元アイドリングの伊藤祐奈氏が中心になり元アイドルたちがプロデュースした「サマー&アイドル」や、男女6人組パフォーマンスグループ「AAA(トリプルエー)」の海の家も出現したが、ライブは控え、音楽はモニターで流すにとどめて、ファンとの交流イベントが実施されている模様だ。
「サマー&アイドル」はクラウドファンディングの「マクアケ」を使って、目標の100万円をはるかに上回る258万1,000円を集めた。限定グッズなどを購入して海の家企画を応援するという趣旨のクラウドファンディングだったが、元AKB48や元ハロプロのメンバーも参加。
購入者が元アイドルのファンなので、店舗の顧客の囲い込みにも役立っている。
前出、ノバレーゼは材木座の婚礼施設「アマンダンブルー鎌倉」を、夏季限定のレストランとして開放し営業しているが、今年は新しくクーラーの効いた屋内で食べる、涼しいバーベキュー(BBQ)を提案している。
以前からディナーでBBQを提供して地元住民に人気があったが、ランチタイムは今年が初となる。ディナーでは食材を焼くのはシェフだが、ランチは顧客がセルフで焼く。
これは、施設3階の由比ガ浜から材木座の海が見渡せるプール付きデッキで、肉や野菜を焼き、調理後に屋内のレストランスペースでゆっくり座って味わう、リッチなBBQ。屋内の海側は全面ガラス張りになっており、オーシャンビューが素晴らしい。クーラーの入ったおしゃれな海の家にいるような気分になれる空間となっている。
食材、焼台などは全て店で用意するので、手ぶらで出かけられる。料金はランチ5,000円、ディナー7,000円。
1日4部制で昼は4組、夜は2組限定で2時間制。昼は4人、夜は6人以上で、60人まで対応する。ほぼ連日予約で埋まっており、反響は計画以上とのことだ。
今年のような浜を歩くのも厳しい猛暑では、海に来ても、さっと上がって冷房が涼しいカフェで休みたくなる。涼しいBBQというアイデア商法が、定着し広がっていくのかが注目される。
以上、神奈川の主要海水浴場は、地元市民も観光客も幅広い人たちが楽しめるファミリービーチとして確立すべくチャレンジしている。海水浴客を継続的に伸ばして、海離れを食い止めることはできるだろうか。
photo by: 長浜淳之介