「Society 5.0」をめぐる経団連の甘えと強欲の一端を示す記事が下記である。
経団連は14日、平成31年度税制改正に関する提言を発表し、31年10月の消費税率10%の確実な実現や、企業の研究開発減税の拡充などを求めた。(中略)また、経団連が目指す新たな経済社会「Society(ソサエティー)5.0」実現に向け、研究開発減税で、法人税額の控除上限の25%から30%への引き上げと、期限切れになる上乗せ措置延長を要望した。
(9月14日産経ニュース)
大企業の法人税を優遇する租税特別措置の拡大を、「Society 5.0」という大義名分のもとにはかろうという目的を持つ要望だ。
個人や零細企業を苦しめる消費税は上げ、大企業の法人税は研究開発のために下げてほしいという。なんと厚かましい論理だろう。
そもそも「Society 5.0」のめざすデジタル革命は、リスクをとれず、発想の転換が遅々として進まない大企業よりも、発想が自由で、決断が早く、フットワークの軽い個人や零細企業に推進者としての期待がかかる。
IoTやAIやブロックチェーンは社会を全く異なったものに変えるだろう。そこに戦後日本の経済を牽引してきた垂直統合型の大組織や発想は必要ない。
一橋大学名誉教授、野口悠紀雄氏は著書「産業革命以前の未来へ」で、企業のモデルチェンジに後れをとっている日本の現状をこう指摘する。
戦後日本の高度成長は垂直統合型企業によって実現された。事業分野は鉄鋼、電気、自動車それに電力だ。…日本経済全体の成長率はこうした企業の売上高成長率によって規定されてきた。そして未だに合併して企業規模を大きくする方向を目指している。…しかしそれによって未来が積極的に拓かれるわけではない。
日本にはアップルもアマゾンもグーグルもフェイスブックも生まれなかった。それに続く新しいビジネスモデルをみても、ライドシェアリングの「Uber」や民泊の「Airbnb」など米国勢のほかは中国の台頭が目立ち、日本は立ち遅れている。中国には日本のように垂直統合型の巨大製造業がなかった分、リープフロッグ(蛙跳び)とやらで新技術導入が迅速に進められたという。