森友疑惑をめぐる財務省の不祥事が起きてさえ安倍首相が首を切れない麻生太郎財務大臣と電力業界の関係はよく知られている。
麻生氏と九州電力の仲は特別だ。麻生氏の父、太賀吉氏は1951年に2つの電力会社が合併して九州電力になったさいの初代会長だ。その縁で、九州財界の大物、第9代九電会長、松尾新吾(現相談役)が麻生氏の政治活動を支援してきた。
これまでに再稼働した原発9基のうち九州電力は4基をしめる。4年前に太陽光発電の買い取り契約を中断する動きがあったさい、先陣を切ったのも九州電力だった。その背後に、麻生太郎氏が控えていることは容易に想像できる。
麻生・松尾の“独尊”体質は九電にしみこんでいるように思える。玄海原発再稼働の説明番組をめぐる「やらせメール」問題で、九州電力がつくった第三者委員会が当時の佐賀県知事との不透明な関係を指摘したのに対し経営陣が猛反発した一件もそうだ。
第三者委は自分たちに有利な結論を出してくれる存在であるべきだと認識し、気に入らない報告が出てくると受け入れない。九州財界に絶大な影響力を誇ってきた会社の視野狭窄症だ。
「やらせメール」問題で松尾会長が相談役に退き、九経連会長も辞任したが、難航した九経連会長の後釜には麻生太郎氏の実弟、麻生泰氏(麻生セメント社長)が就いた。麻生太郎という人物の横柄な態度は、九電の社風につながるところがあるかもしれない。
九電の再エネ出力制御に関し、NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は次のように指摘する。
需要が低い時期には原発や石炭火力発電の出力をあらかじめ少なくしておくなど、再エネの出力制御をする前にできることはあるはず。二酸化炭素(CO2)を排出しない太陽光や風力を最大限活用し、再エネの普及を進めていくべきだ。
(毎日新聞)
政府や電力会社が将来の主力エネルギーを再エネとはっきり定め、原発や石炭火力を「古い電力」として排除する方向に向かえば、今回のように、再エネの発展に水を差すような選択はありえないのではないか。
九州電力を口火として、伊方3号機が再稼働する四国電力など他の電力会社にも太陽光の発電抑制が広がることが懸念される。
経産省出身の取り巻きが幅を利かし、麻生太郎、甘利明といった電力利権の権化が睨みをきかす安倍政権に、将来を見据えた政策を望むのはしょせん無理な注文かもしれない。
それでも、世界の電力界の目は再生エネルギーに向けられている。
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