よく知られている通り、電力会社が原発再稼働に躍起になるのは「総括原価方式」というシステムがあるからだ。必要経費に利潤を足して電気料金をはじき出す。放っておいても儲かる仕組みだ。
問題は利潤の大きさだ。会社の資産額を「レートベース」とし、それに一定の報酬率をかけて利潤の額を決める。資産が大きいほど利潤が増えるわけだ。
原発の建設費が膨大なのは周知のとおりで、それだけ資産額を押し上げる。加えて使用済みを含む備蓄核燃料なども資産として利潤算定のベースとなる。
ところが、原発を廃炉にすることが決まると、たちまちそれは巨額の不良資産となり、廃炉にも膨大な費用がかかるため債務超過の恐れさえ出てくる。
だから、政治が強いリーダーシップを発揮しない限り、電力会社は原発の維持にこだわり続け、そのために邪魔なものは、たとえ再生可能エネルギーであろうと排除する。
経産省は、原発の出力を調整するのは難しいと言うが、ドイツやフランスでは需要に応じて原発で出力調整した実績があり、その気になればできるのだ。
ドイツは2050年までに脱原発を進めて、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を60%に引き上げる目標を掲げている。
昨今、世界における再エネの普及はめざましい。大自然を利用でき、燃料の輸入など不要。CO2を排出しないし、分散型なので災害にも強い。
欧州、中国で爆発的に再エネが拡大し、大幅なコストダウンが実現したおかげで、米国における普及もスピードアップし、カリフォルニア州では2016年、再エネ35%を達成、2030年までに50%をめざしている。再エネの未来は約束されているといっていい。
遅ればせながら、わが国の経産省も再エネの「主力電源化」に向けて課題を整理し始めたところではある。それでも、「原発ゼロ」には決して腰を上げようとしない。
小泉純一郎元首相はかねてから「安倍首相が原発ゼロをやろうと思えばすぐできる。できることをやらずに、憲法改正というできもしないことをやろうとするのは不思議で仕方がない」と言っている。
なぜそうなるのか。背後に、“原子力ムラ”の企業群があるのはもちろんのこと。ムラの住人たちが献金やパーティー券購入で応援する麻生太郎、甘利明ら自民党の大物政治家が存在することもまた忘れてはならない。