所有者役はど素人
この所有者役の詐欺師は、とんだど素人であった。女手配師は、所有者役の夫役などを手配し、この夫役らが演技指導(情報の暗記)をした。
ところが、この所有者役は、出来が悪かった。本人確認のための、「干支」を間違えたり、所有先である住所を間違えた。結果、取引では話をするなと指示が出て、相槌しかしなかった。
所有者役の羽毛田正美容疑者は、元は生命保険のセールスレディであった。女手配師A氏は、単に人当たりが良く、日常のコミュニケーションができる人物であり、詐欺自体に勘付かない程度の間が抜けた人物であれば、それで良かったという。
それにしても、情報を正確に覚えられないというのには、詐欺グループの誰もが閉口したはずだ。「なんて覚えの悪い奴を連れてきたんだ!」と。ただし、結局はこの所有者役は最もリスクを背負い、逮捕される要員である。なりすまし役は最も逮捕されるリスクが高いが、他は、このなりすまし役に騙された、知らなかったで逃げ切るつもりだからだ。
なぜ騙されたのか?
そんな杜撰な計画は、他の不動産会社は軒並み見抜いていた。五反田界隈の土地所得には気をつけろという話は、不動産会社では有名な話であった。手配師が用意した所有者役の身分証であったパスポートは、透かしなども完璧であったというから、そもそもの人選にもミスがあったのだろう。
では、なぜ積水ハウスほどの大手が騙されたのかという疑問が残る。内部の話によれば、この巨額詐欺事件では社長の決済の方が担当者が会ったより先であったという。つまりは、積水ハウス上層部の決定によって、担当部署が動いたということになる。
お家騒動もあった積水ハウス、地面師らの逮捕によって、何か変化が起きるであろうか。