改ざんという不正作業の心労がたたって体調を崩したAさんは、昨年の秋頃から役所を休んでいた。真面目で正義感の強い人柄だったようだ。だからこそ、政治的圧力によって、異常な国有地取り引きを強いられた状況を決裁文書に記録として残しておきたかったに違いない。以下は、政治がらみの記載の一部だ。
平成25年8月13日 鴻池祥肇議員秘書から照会。
平成26年4月25日、安倍総理夫人が森友学園理事長に「いい土地ですから、前に進めてください」と発言。
平成27年1月29日 平沼赳夫衆院議員秘書から財務省に相談。
平成27年2月17日 鳩山邦夫衆院議員秘書が近畿財務局に相談。
このほか、籠池氏が日本会議のメンバーで、安倍首相や麻生財務大臣が日本会議国会議員懇談会の幹部であることにも触れている。
改ざん文書では、こうした記述がすっぽり削り落とされた。歴史的資料となる公文書の改ざんは国民への背信である。コトの重大さを最も知っている職員の心的ストレスは計り知れない。
改ざんについて、OBたちは「われわれの常識では、ありえない」「黒塗りにすることはあっても、元々を変えてしまうというのは考えられない」などと語った。前例のないことをAさんらはやらされたのだ。
国会で佐川・元理財局長は「交渉記録はない」「記録は廃棄した」と強弁し続けた。OBの一人は言う。
「佐川さん、嘘ついたらあかんと。文書ちゅうんはそういうもんやない。そういう記録が全然ないなんていうことは。嘘つくなちゅうて、もう歯がゆい思いがして」
そんな佐川氏を処分しながら、退職金はほぼ普通に出し、「極めて有能だった」と評価した麻生太郎財務相の姿勢についても、OBたちは口々に批判した。
「国会を欺き、国民を欺き、犯罪行為に等しいことをしでかした人を有能な公務員として評価することがあったとしたら、亡くなった職員は一体、何だったんだ」
「麻生大臣があんな態度でずっと大臣であり続けるって、自殺した職員を知っている周りの人とか近財の職員、管財部の職員にとってみたら本当に耐えられない」
こうした声について考えを問われ、麻生大臣は答えた。
「そういった意見もあるということはうかがっておきます。それしか他に言いようがありません。そういった意見もある。そうじゃない意見もありますから」
この人にまともな答えを期待すること自体、馬鹿らしい。
おそらく、麻生氏は安倍首相側近が自分の頭越しに佐川氏を操ったことを内心、快く思っていないだろう。俺はすべて知っているが、見て見ぬフリをしてやってるんだ、とでも言いたいのではないか。
世間からどんなに批判を浴びても、安倍首相が麻生氏に責任をとらせない理由のひとつは、こんなところにもあるにちがいない。彼らの腐れ縁ともいうべき同盟関係が、政府の隠蔽体質をいっそう強め、日本の民主主義を危うくしている。
image by: 安倍晋三 - Home | Facebook