ロシアの意識は「戦時中」
さて、2014年3月のクリミア併合。これ、世界的に見ると、圧倒的に「ロシアが悪い」。しかし、ロシアに住むロシア国民で、「わが国が悪い」と思っている人はほとんどいません。
まず、2014年3月が「事件発生日」と、彼らは考えない。2014年2月、ウクライナで革命が起こり、「親ロシア」のヤヌコビッチ政権が崩壊した。そして、「親欧米」政権ができた(これが事件の発端)。
新政権は、「ロシア黒海艦隊をクリミアから追いだし、NATO軍を入れる!」などと宣言している。。プーチンは激怒して、「もともとロシア領だったクリミアを取り戻した」という認識なのです(事前に住民投票が実施され、98%がロシアへの併合を支持したとされる)。
ロシア側の主張がどうあれ、ロシアは世界的に孤立しました。制裁がはじまり、どんどん強化されていった。そのプロセスは、今も終わっていない。ロシア国民は、「わが国は、アメリカと戦争状態にある」と感じながら生きています。
一方、クリミア併合は、かつてソ連の一部だったバルト三国や、事実上の支配下にあった東欧諸国を恐怖させました。「ロシアは、ウクライナを支配し、次にバルト三国、東欧と進軍してくるつもりだ」と感じ始めた。
私の親友のポーランド人は、モスクワ国際関係大学の同級生。モスクワにいたときは親ロシアでしたが、今では、すっかり反ロシアになり、「侵略に備えよ!」などといっている。つまり、東欧の人たちも、「戦争が迫っている」という危機感を感じながら暮らしている。
イギリスで今年3月、ロシアの元スパイ・スクリパリさん暗殺未遂事件が起こりました。イギリスは、即座に「ロシアの仕業だ!」と断定(ロシアは、否定)。アメリカや欧州諸国を巻き込み、対ロシア制裁を発動しました。「スクリパリ暗殺未遂事件」につかわれたのは、「ノビチョク」という「化学兵器だ」と発表された。それで、イギリス国民は、「ロシアがわが国を化学兵器で攻撃した」と理解した。東欧だけでなく西欧も、ロシアの脅威を身近に感じるようになった。