限りなくクーデターに近い告発。日産ゴーン会長の不可解な逮捕劇

 

更に奇妙なのは、検察も日産も「多くを語らない」ということです。巨大な上場企業でスキャンダルが起きるということは、株価の下落を招きかねません。本稿の時点でも、ルノー株も日産株も暴落しています。ということは、巨大な時価総額が消えることになります。

ということは、両社の金融面での信用力低下など、日仏経済に大きな影響があるはずです。にも関わらず、別件操作に近い逮捕劇を展開して、司法当局も、また日産の残った幹部も多くを語らないという中では、どんどん株は下がる可能性があります。どうして、そのようなことが許されているのか、これも奇妙な印象があります。

改めて整理すると、最初の「有価証券報告書への虚偽記載」というのは、別件捜査と言いますか、突破口のようなものだとして理解するにしても、その他の点については疑問だらけということが指摘できます。少なくとも、

  • フランスとの外交関係が悪化する懸念
  • グループ全体の経営と離れて、日産が独自に捜査協力というのは不自然
  • 巨額の時価総額が消えるという株価への影響が配慮されていない

という疑問点は消えません。

では、この連立方程式には答えはあるのでしょうか?

わかりません。

ですが、一つだけ話として、筋が通る仮説を描くことはできます。

それは、

  • 日本政府とフランス政府が連携してゴーン体制を終わらせようとしている
  • グループの再編成のためには株価は安くなっていいという判断がある

という仮説です。これに加えて、日本の日産本社は、自分たちの正義感からというよりも、この大きなストーリーの中で振舞っているという考え方です。

まずフランス政府ですが、元々はルノーというのは公営企業でした。前史はともかくとして、第二次大戦が終わった1945年から1990年にかけての45年間は、そもそも「株式会社」ですらなく「国営ルノー公団」だったのです。そして民営化後もルノー株の大株主となっており、現在でも15%を保有して議決権も持っています。

そのフランス政府としては、ルノーという企業が「グローバリズムを前提とした最適解経営」を行うよりは、フランスの国益を重視して欲しいという立場を取っている、特に現在のマクロン政権はそのような姿勢であると報じられています。

例えば、フランス政府としては、国内向けの車はフランス国内で製造して、雇用創出をして欲しいと考えているのに、ゴーン体制はグループ経営の最適解を求めて、もっと製造コストの安い国で(例えばEU内の東欧など)製造を進めているわけで、そこに対立が生じている可能性はあります。

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