限りなくクーデターに近い告発。日産ゴーン会長の不可解な逮捕劇

 

また、日本の側としては、巨額の負債を抱え、高コスト体質を改善できずに危機を迎えていた日産を立て直したゴーン体制への評価はあるにしても、どこかでゴーン体制からの脱却、つまり日産と三菱自動車については、外資系企業として外国人が経営するのではない形を模索しているということは考えられます。

勿論、現在の日本には官民ともに資金的な余裕はないので、日産と三菱自動車を自国の資本が過半数になるまで買っていくということは基本的に不可能です。ですから、完全に外資から離脱することは難しいわけですが、仮の話として、フランス政府との間に「あまりにも純粋にグローバル最適解の経営を行う」ゴーン体制を「終わらせよう」ということで、何らかの事前調整があったという推測は成り立つと思われます。

株が下がってもいいという覚悟で強制捜査が行われていることに関しては、もしかしたらグループを再編するには株が安いほうが好都合ということがあるのかもしれません。例えば、日産株が大きく下げて、ルノーの下げが小さければ、それだけ日産株をルノーが買い増しすることは可能になります。

その延長で、間接的にフランス政府の影響力が日産に及ぶようになっても仕方がないと、日本サイドが腹をくくった可能性もあるかもしれません。一方で、ルノー株の下げが大きければ、日産はルノーの支配を弱めることも可能になります。ただ、仮にそうなった場合に、株価が下がるということを株主が許すはずはありませんから、法律面で慎重な進め方が必要と思います。

それ以上のストーリーを描くのは困難ですが、ゴーン氏逮捕というニュースを受けて、フランスのマクロン大統領は「注視していく」と言い、ルメール経済・財務大臣は、「ルノーの安定と雇用を優先する」と語ったと報じられています。

もしかしたら、フランス政府としては「三社連合への影響力を強めようという意思を持っているのかもしれません。仮にそうであっても、それをある程度は理解した上で、日本側としては、「ゴーン体制排除」のためにはフランスとの連携を選択した可能性もあります。

では、両国の世論はどうかという要素ですが、フランスの場合は「高額報酬批判+グローバリズム批判」という世論のセンチメントは強いと思います。マクロン大統領という人は、一種の「中道ポピュリズム」を求心力にしようというタイプの政治家ですから、「ゴーン体制」を終わらせるということは、政治的にはプラスということは考えられます。

一方で、日本の場合には検査員資格問題で恭順姿勢を見せない日産に対するイメージの低下という問題もくすぶっています。その上で、今回の高額報酬問題について一旦それが違法だということになれば、延々と批判報道が続くことが考えられます。そうなれば、検察としても政権としても政治的にプラスの効果はあると思います。

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