憲法上の問題はないのか
【東京】は1面トップに2面の解説記事「核心」、6面に会見詳報、31面にも関連。見出しから。
1面
- 大嘗祭 公費に異議
- 秋篠宮さま「宗教色強い」
- 「宮内庁、聞く耳持たず残念」
- 平成大嘗祭 経費25億円
- 皇室行事 議論深める契機(解説)
2面
- 政府決定に異論 波紋
- 秋篠宮さま大嘗祭言及
- 「求められる中立 慎重に」
- 「皇族が発言 憲法上問題ない」
31面
- 大嘗祭発言に識者ら驚き・評価
- 前例踏襲 公的祭祀化を危惧
- 伝統儀式 政教分離抵触せず
- 秋篠宮さま会見
- 小室さん側は「きちんと説明を」
- 眞子さま結婚延期巡り
uttiiの眼
《東京》は、1面記事のリード末尾で、「皇族が公の場で、政府方針に異を唱えたのは極めて異例」としている。また末尾に編集委員である吉原康和記者による「解説」があり、記者は「憲法は天皇の国政関与を禁じているが、皇族についての明文規定はない。皇族も天皇に準じて政治的発言は控えるべきだとの声はある。だが、今回の発言は、皇室行事について皇族の立場から『身の丈に言った儀式が本来の姿』との考えを示したものだ。本来、宮中祭祀を含む私的な皇室行事の中身については、皇室自身が決めるべきだ」と秋篠宮発言に理解を示している。至極真っ当な考え方だと思う。
2面で注目されるのは次の記述。秋篠宮さまの発言は「税の使途に厳しい目を向ける庶民の感覚に近く、歓迎されそうだ」としている部分。バブル経済のただ中に、22億円超という巨費を投じて行われた前回の大嘗祭のようなものを否定し、まさしく「身の丈に合った」ものを皇室の私的な行事として行いたいという感覚は、やはり正常なものと言えるだろう。また、秋篠宮さまの発言には、「節約」や、「公費支出を遠慮する」感覚を読み取ることも可能だろう。勿論、それだけではないが。
2面記事は、この秋篠宮さまの発言が憲法上問題となるか否かについて、対立する専門家の意見を紹介している。南野森氏は、「天皇は政治的中立性が求められ、皇位継承順位が高い皇族も同様と考えられている」としなから、「皇室の私的行事に関係者の1人として私見を述べたことは、ぎりぎり憲法上の問題はないとの評価も可能」」とする。しかし同時に、「皇族が政府決定に異を唱えるようなことになると、憲法の定める象徴天皇制との緊張関係が高まるため、発言は慎重であるべきだ」と指摘したというが、否定から肯定へ、また肯定から否定へと評価が揺れていては、何が言いたいのか分からない。一方、園部逸夫氏は秋篠宮発言が記者の質問に答えたものである点を捉え、「所管や感想を述べることは当然あるし、発言すべきでないというなら会見する意味がない」と分かりやすい。さらに、《朝日》も紹介していた横田耕一氏は「政治的権能を持たない象徴天皇とは違うので、皇族が政治的発言をすること自体は憲法上の問題はない」と言い切っている。
《東京》が紹介している専門家は、リベラルに偏っているが、その中でもかなり厳しい意見の対立がありそうだ。天皇制にかかわる議論の細部は、依然としてかなりの程度に論争的な分野になっていることが分かる。今回の秋篠宮さまの発言は、天皇制を巡る様々な議論の、非常に微妙なところを抉ったということだけは言えそうだ。
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