ポピュリズムの本質は「大衆迎合主義」では説明できず、他者の異論を認めない「反多元主義」にあり、民主主義と真っ向から対立する。三権分立と権力の分離、民意を守りながら、さまざまな機関がチェックし合い、バランスを保とうとするのが民主主義である。ポピュリストは、たんに制度、体制を批判するだけでなく、自分たちだけが人民を代表していると主張する排外主義者である。
間接民主制においては、急進的、排外的法案が可決されることは簡単ではない。直接民主制の国民投票でいざ可決されてしまったことは、たとえ投票率が低く「少数票」であったとしても「国民が決めたこと」として、議会のチェックバランス機能を超越したところで踏襲されてしまう。日本にもその危機が迫る。
日本政府は憲法改正で戦争放棄をやめ、他国からの侵略に対し防衛のため戦いやすくするという方向転換を目指す。重要な過程の一つが国民投票で、「国民投票によっておそらく日本も分断される」と著者は指摘する。そもそも日本は有事に戦えるのか。また、賛成にしろ反対にしろ、民意のお墨付きをもらっことになり、後戻りできなくなる。他国の侵略を受ける前に日本はバラバラだ。
……ということがメインの本ではない。欧米のデジタル・ポピュリズムの現状を詳しく伝える。いまはまだアナログ世代とデジタルネイティブ世代が共存している。あと、一、二世代が過ぎれば、完全にアナログ世代がいなくなる。そのとき、デジタルネイティブ世代の住む世界はどうなるのだろうか。
編集長 柴田忠男
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