ここはひとつ、世界をリードする日本の立場を自覚して、次の点を同時に進めていくことが重要となるでしょう。徴用工問題と慰安婦問題については、政府間の合意に従って韓国政府が行動することを求め続け、同時に日本の正当性について国際的に発信し続けなければなりません。
レーダー照射事件については、開示可能なデータに基づき韓国側に謝罪と責任者の処罰を求め続け、これも同時に国際世論に日本の正当性を認めさせるだけの客観的な証拠を発信し続ける必要があります。
同時に、こうした問題が生起したからといって韓国国民の全てが反日感情で凝り固まっていると考えるような先入観を抱かず、韓国側の知日派、親日派を支え続け、増やしていくような発信を、韓国国内と国際世論に向けても続けなければなりません。
韓国国内に向けては、韓国の安全が日米安保体制によって支えられている現実について、米国から見た日本の戦略的重要性や朝鮮国連軍を支えている日本の存在を通して、伝え続ける必要があります。日本国内に向けては、日本が米国にとって必要不可欠な戦略的根拠地であり、仮に在韓米軍が撤退するような事態が生じても、周辺国が容易に手出しできない現実を示し、国民の動揺を避けなければなりません。
そして、日米同盟を前提としながらも、国境を接する韓国、北朝鮮、中国、ロシアに対する備えを、優先順位を正しく設定して整備していくのです。これを同時進行させることができるのは、安定政権を維持している安倍政権をおいて他にないと言ってよいでしょう。これから3年足らずの間に、安倍政権が上記の取り組みを実現することができるかどうか。そこで日本の未来の明暗が分かれてくると考えるべきなのです。
韓国の反日姿勢や「対馬海峡38度線論」でいたずらに激高し、短絡的な世論を煽ることは、安倍政権の足を引っ張る「贔屓の引き倒し」につながりかねず、日本の国益を損ねる可能性があることを忘れてはなりません。先に挙げた取り組みは、どれが先ということはありません。同時に、しかも着実に進めることが日本の平和と安全、そして繁栄にとって重要なのです。(小川和久)
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