ゴーン逮捕が日産経営陣のクーデターとしか思えない当然の理由

 

米国の常識で考えれば「日産」は株主のものであり、かつ、日産の一番の株主はルノーなのだから、ここまでのことをするのであれば、ルノーの全面的な協力を持ってすべきなのです。内部調査でゴーン氏の背任行為があったと考えるに十分な証拠が見つかったのであれば、たとえゴーン氏がルノーで絶大な権力を持っていたとしても、ルノーの経営陣や、ルノーの株主であるフランス政府を説得することは可能なはずです。

まずは取締役会議でそれを問題として取り上げ、証拠を取締役全員に開示し、取締役会としてゴーン氏に辞任を迫るべきなのです。もし、どうしてもそれが難しいのであれば、次には大株主であるルノーの協力を得て、株主の総意として取締役の解任と言う手続きを踏むべきなのです。その上で、必要であれば、(損害を被った株主の代わりに)会社がゴーン氏に損害訴訟を起こすのが筋です。

この「真っ当な手続き」が取れなかったことに、私は大きな違和感を感じています。これはまさに、「ゴーン氏が会社を私物化していた証拠」がルノーの(ゴーン氏以外の)経営陣やフランス政府を説得するには不十分だったことを示していると感じるのです。

そうなると、日産の経営陣が、今回の行動に出た本当の理由が知りたくなります。本当の理由は「会社を私物化していたゴーン氏を排除する」ことにあったのではなく、これ以上ルノーの影響力が大きくなることを嫌った日産の経営陣のクーデターであったと思われても仕方がない状況なのです。

一部のマスコミによると、日産の経営陣は、ルノーの株を入手することにより「株の持ち合い状況」を作り出して、ルノーの議決権を奪おうとしているそうです。

それこそ(会社の持ち主である)株主の利益を無視した許されない行動であり、そんな経営陣の行動は、取締役会がなんとしてでも阻止すべきだし、そんなことを考える経営陣はクビにすべきです。

日産の利益の大半がルノーに吸い取られていることを問題視する声もありますが、利益のうちどのくらいを配当として株主に還元するかを決めるのは取締役会だし、全ての株主に平等に配当を支払っている限り全く問題ありません

そもそも、ルノーが日産を救済したのは、巨大な資本力を持つトヨタやフォルクスワーゲンに対抗するためには、単なる「パートナー契約」ではなく、資本提携や経営統合も含めた密な関係を持つことがお互いのためになると判断したからです。今後、激化することが明らかな自動運転や電気自動車への研究開発投資は、運命共同体として集中して行った方が良いのです。

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